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「恥ずかしくて思わず手が出ちゃった自分に呆れて嫌気がさしてないか…だって。
どうでもいいやつ相手にそんなの気にしねぇだろ」
フッと笑った後、兄貴はそれ以上何も言わず慧を構うことに専念する。
てっきり慧に会いに来た…っつーか8割以上はそうだろうけど…と思ってたのに、俺の様子も見に現れたらしい兄貴。
本当に抜け目がない。
こいつにはこの先起こる全てが見えているんじゃないだろうか。
そんなありもしない想像が頭を巡った。
*
それから数日が過ぎ、今日は土曜日。
明日桃さんに渡すための花を買いに来ていた。
バイト先の近くにある花屋で予約しておけば明日受け取れる。そう思って選んだ店。
何を買うか、どんな花束にするかは調べて決めた。
すっげぇキザだけど桃さんが喜んでくれるならそれでいい。
からかわれたとしてもそれが俺の本当の気持ちだから。
初めて入る店内は花の香りが充満していて少しだけ居心地が悪い…のは俺の性格が悪いからかもしれない。
「いらっしゃいませ………あれ、君は」
奥から出てきた店員がキョトンとした顔で俺を見る。
柔らかい雰囲気に小柄な身体。
「やっぱり。前に駅で桃といた子だ」
最悪。今すぐ店を出たい。
そんな俺の気持ちなど汲み取ってはくれない彼が近寄ってくる。
「今日は何をお探しですか?」
「いや……花を」
「ぷっ。そりゃ花屋だからね。誰かにプレゼント?」
ガキ扱いされたような言い方にムッとして…つい喧嘩腰になってしまう。
「桃さんに。お祝いで花束を送りたいんです」
「桃に…お祝いってなんの?」
「昇進されたんすよ」
伏せられた目に言いようのない気持ちが湧き出て止められない。
「俺が桃さんに渡す花、作ってもらえますか?」
すげぇ嫌味言ってる自覚はある。
ガキだってこともわかってる。
「そう、なんだ。じゃあ最高の花束にしなきゃね」
にっこり笑った竹虎さんは、いくつかの花を進めてくる…その中にはヒマワリの花もあった。
もしかしたら、この人が桃さんをヒマワリだと言ったのかもしれない。
「この花がいいです」
白くて可憐な花。
桃さんみたいな花だと思った。
「マーガレットだね。いいと思うよ。
他に何か追加する?」
「……バラ。赤いバラを入れて欲しいです。
できるだけ小さいのを」
竹虎さんの指が花を掴み束にしていく。
白の中に映える赤い色がとても綺麗だ。
「バラは何本にする?2.3本ぐらい?」
「……12本」
「え?」
「12本じゃなきゃ意味が無いんで」
俺の意図に気づいた竹虎さんが呆れたように笑った。
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