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「そういうのって調べて来たの?」
花束を作りながら聞いてくる声は穏やかだ。
俺の無茶な注文に苦労しつつも、どんどんと花束は出来上がっていく。
「あんたには関係ないですよね」
棘のある声が出てしまうが、竹虎さんは気にしてないのかにこやかに笑う。
「まぁまぁ。ちなみにその後は99本で次は108本?」
「はい」
「その後は?」
「それは秘密です」
俺を見て手元に視線を戻す。
何か言ったように見えた口元には、やっぱり薄い笑みが浮かんでいた。
相手にしていない…というよりは相手にする価値もないと言われているみたいだった。
「獅子原君だっけ?君、桃よりだいぶ若いでしょ。
それなのにもう先の事考えてるの?」
1本、また1本と足されてゆく赤い色。
それが増えるたびに俺の決意は固まる。
「考えない時の方がないです。考えんなって言われても無理なほど大切なんで」
「人の気持ちなんてすぐ変わるのに?相手が本気にして、それがいつか重たくなったりしない?」
「そんなのその時になってみなきゃわからないことですよね」
素直だね、と笑う竹虎さんは俺が思っていたほど悪い人じゃないのかもしれない。
本当に嫌なヤツがこんな凄い作品なんて作れない…そう思うぐらいの花束が出来上がった。
「特別サービスでオマケしてあげる」
「……どうも」
「やっぱり素直だ。本当は僕のことなんか大嫌いでしょ?」
兄貴とはまた違う食えない人。
攻撃的なところなんて全く無いのになぜか身体に力が入る。
にこにこ笑ってる奥で見定められている気分になって握った手が汗ばんだ。
「その代わり、ちょっとだけ付き合ってくれる?」
どうしても君に話したい事があるから。
竹虎さんの声と目が余りにも真剣で、俺は断る事ができなかった。
届きそうで届かない距離に焦って、この人の話を聞けば何かが変わると思ったんだ。
桃さんが話してくれるのを待つって言ったくせに。
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