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寝室を出てリビングへ。そしてバスルームへ向かう。
「リカちゃん留守電入ってるけど」
「あー……いいよ放っておいて。どうせ勧誘とかだろ。
それより急がないとあいつら来るぞ」
急いでシャワーを浴びる。汚れたエプロンや服に気を取られ、うっかり服を持ってくるのを忘れてしまった。
降り注ぐお湯の中どうしよう…と立ち尽くす俺に扉の向こうから声がかけられる。
その主はもちろん1人しかいない。
「着替え置いとくから」
タイミング良く用意された下着は俺のサイズで、なんであるんだ?と不思議に思う。
けれど、置かれていたリカちゃんの部屋着を着たらそんなことはどうでもよくなってしまった。
7分袖だから腕はまくらないで済む…が、裾は長い。
お尻まで隠れる長さのTシャツに黒の半端丈パンツ。
もちろん俺が着れば半端丈ではなくなるけどな。
見慣れたリカちゃんの部屋着。
リカちゃんが着ている服を自分が着る…っていうのは、なんだか気恥ずかしい。
「足が長くて細い…嫌味なやつ」
鏡に映るのは明らかにサイズの合っていない服を着て、今さっきまで風呂に入ってたのが丸わかりな俺の姿。
「これ絶対にバレるだろ……」
やっぱり今すぐ帰って着替えようと浴室のドアを開く。
「痛ってぇ!」
そこにあったのはリカちゃん……ではなく左唇の端に絆創膏を貼って仏頂面をしていた歩の姿。
「え、いつの間に?」
「さっき来たんだよ。
………………あぁ。相変わらず仲良いのな、お前ら」
俺の体を上から下へ見た歩がハッと鼻で笑う。
なんで、よりにもよって最初に遭遇すんのがコイツなんだよ。
からかわれるのを覚悟していたのに、歩は身構えた俺を黙ったまま見るだけだ。
拍子抜けした俺は自分から歩に話しかける。
「お前唇のとこどうしたんだ?」
「噛まれた」
「は?」
噛まれたって何に?犬?いや待て…歩って確か動物アレルギーで近づけないはずだ。
学校に住み着いてた野良猫を見て嫌そうな顔してたのを俺は見た覚えがある。
ん?動物じゃなくて猫アレルギーだったっけ?
わかんないけど嫌いだったのは確かだ。
「容赦なく噛みやがって……」
「何に?」
いたってシンプルな質問だと思う。
それなのに歩は「はぁ?てめぇ何聞いてんだよ。」とばがりに俺を睨んだ。
「え、なんだよ…」
「べっつに。それよりも明らかにさっきまで『ヤッてました』って格好どうなんだよ。隣に住んでんのに、わざわざ兄貴の服着てバカップル丸出しにすんな」
吐き捨てるように言って歩はリビングへ消えてゆく。
「……なんであんな機嫌悪いんだよ…」
何が何かわからず、リカちゃんに呼ばれるまで、俺はその場に突っ立っていたのだった。
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