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「食べ終わったらデートしましょうよ」
「嫌よ。あたしは仕事で疲れてるの!」
「10分だけ、ね?」
ね?と首を傾げられても困る。
徐々に絆されていってるのが自分でもわかるから。
「せっかく天気もいいし明日は休みなんだし」
「ダメったらダメ」
「してくれないと、この前俺の家に泊まったことみんなにバラしますよ」
ず、ずるい。
サラッと言われた内容は、どうしても消したかったあの日の記憶。
泊まったなんて…もしリカに知られたら。
いやいやリカはまだいい。もし豊に知られたら……。
考えただけで身体のどこかが痛んだ。
「……本当に、」
「性格悪いですか?
もう言われ慣れたから何とも思わないっすよ」
最後の一口を食べ終え、歩ちゃんがスプーンを置く。
そこにはもう一粒の緑も残っていなかった。
「桃さんの食べないなら食べていい?」
途中で食べるのをやめてしまったパスタは少し冷めていて、これ以上食べる気にはなれずに皿を押しやった。
「間接チュー…的な?」
ふふっといじめっ子のように笑い、あたしを見る目は優しい。
「バカ言ってないで早く食べなさいよ。
遅くなればなるほど散歩の時間短くしてやるんだからね!」
「散歩……まぁ別にいいや。それは急いで食べねぇと」
その言葉通り、ほんの数分で食べ終えた歩ちゃんが席を立つ。それに倣うように付いて行った。
「ちょっと!あたしが出すわよ!!」
「いいですって。俺が誘ったんだし」
「年下に出させるなんてダサい事させないで」
「それじゃあ年下のワガママぐらい、大人なら素直に聞いてくれよ」
全然あたしの言うことなど聞いてくれない。
年上の面子が台無しだわ…。
「時間ないんで公園でいいですか?」
店を出て振り返った歩ちゃんを睨みつける。
「なに怒ってんすか。ったく、仕方ねぇなぁ……」
近づいてきた歩ちゃんは、あたしに手を伸ばす。
「デートつったら手繋がなきゃ…って怒ってんすよね?」
「違うわよ!!!!」
「桃さん可愛いー」
「ちょっとは人の話聞きなさいよ!!」
「はいはい。うっせぇから騒ぐなよ」
離せと言っても握られた手の力は強いまま。
けれど人目につかないよう隠してくれる気遣いはある。
本当に…この子は高校生なんだろうか?
窺い見るけれど返ってくるのは無表情の冷めた視線だけ。
こうして、あたし達の2度目のデートが始まった。
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