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手首を掴まれ、背もたれに押さえつけられるように口付けを受ける。
いつの間にか立っていた歩ちゃんとベンチに座ったままのあたし。
元々あまり無かったはずの力の差が大きくなっていた。
「っ…ン、……」
二度目のキスは少し苦くて熱くて荒い。
前に交わしたものよりも遥かに扇情的かつ攻撃的なキスだ。
感情をぶつけるように強く押し付けられた唇。
お世辞にも上手いとは言えないソレ…なのにあたしの身体は何かを感じ取り始める。
「やめ、」
やめろと言おうとした声は滑り混んできた器用な舌で封じられ、代わりに鼻から声が抜けた。
「……ん……ぁ…」
今までキスなんて何度となくしたのに。
声を漏らすことなんてなかったのに。
いつも主導権は自分にあったのに。
こんな風にゾクゾクと背筋を震わせることなどなかったはず…なのに。
「あ、あゆ…む」
「桃」
上顎をなぞる舌先。時折、唇を噛んで悪戯をして謝るように舐めていく。
奥に潜んでいたあたしの舌を誘い出し、好きなように弄ぶ。
「桃…………桃」
されるがままのあたしを見る目が和らぎ、キスはより深まる。
与えるんじゃない。奪うようなキス。
力ずくであたしの理性を奪おうとする。
「……ぅ、ぁ」
「……………可愛い」
無理矢理しているくせにその声は甘い。
いつもは無表情で何も考えてないような顔が、少し興奮しているのか眉を寄せ切なそうに見えた。
「桃さん…」
拘束をやめた歩ちゃんの手が、あたしの股間に伸び…、そして小さく、けれど確かに笑った。
その瞬間に頭が醒めた。
………ーーガリッ!!!
「つっ!!!」
思わず噛んだのは歩ちゃんの口端。
赤く血が滲み歩ちゃんが顔を顰める。
「やってくれんじゃねぇかよ……」
口元を押さえた歩ちゃんがあたしを睨みつける。
ギラギラとした男の顔。痛みと怒りに耐えている顔。
「いい加減にして!!!」
痛みで離れたのをいい事に、急いで荷物を抱えたあたしはまたも彼から逃げる。
きっとまた追いかけてくると思った。
次捕まればあたしは抵抗できない。
今度は自分から受け入れてしまう。
それが怖くて逃げた。求める前に離れてしまおうと思った。
けれど、きっと追ってくると思っていた彼は追っては来なかった。
走り去った後の歩ちゃんがどうしていたかなんてわからない。
後ろを気にしながら逃げて、大通りまで出て…それでも聞こえてこない足音と『桃さん』の声。
あたしは歩ちゃんが追いかけてくれるのを心のどこかで期待していた。
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