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これは過去の自分に向き合う…なんて格好いいものじゃない。
ただ罪の意識から逃れる為。
少しでもその重さから逃げる為。
認めることで許されようとしている。
「本当は気づいてた。
気づいてて知らないフリをしたんだ」
直があたしに向ける寂しそうな目も、何か言いたげに動く唇も。触れたいのに伸ばせない手も。
「時間が解決すると思ってた」
どんどん冷めていく自分の気持ち。
見せなくなった肌に離れていく2人の距離。
きっと直もこんなあたしを嫌になるだろうと放っておいた。
「全部あたしが悪かった」
押さえた目頭が痛くて、あの日の姿が浮かぶ。
あの日、初めて涙を見せた直は既に壊れていた。
自分が壊したくせに見て見ぬフリしたのはあたしだ。
「そんなのお互い様でしょ。僕も桃を傷つけた」
「これは……当然の報いだから」
背け続けた現実は直の心と身体に深い傷を、あたしの身体に消えない跡を残した。
その白い腕に浮かぶ傷跡は痛々しい。
でもそれを必死に隠そうとしていた直はもっと憐れだった。
そう、あたしは直を可哀想だと思った。
一緒にいると安らげたのは事実。だから告白を受け入れて…身体を繋げて。
けれどいつしか直に対する感情が愛情じゃなく同情なのだと気付いた。
「桃。僕はもう前に進んでるから…桃もちゃんと向き合って。じゃないと何も変わらない」
ずっと耳を触る直はとても辛そうだ。
それをまた傷つける。
あんなに泣かせて、あんなに傷つけて。
何度謝っても足りないぐらいの事をしたくせに。
「ごめん、ごめん。本当に…ごめん」
それでも…もう戻れない。
たとえ誰を傷つけたとしても隣にいてほしい人が出来てしまったから。
「直。直、ごめん…」
続きが言えない。
俯くあたしの目に入ってきたのは細く白い指。
10本の指。
顔を上げれば、直は耳から指を離しこちらを見つめていた。
「桃。早く言って」
最後まで情けない自分に微笑んでくれる優しい君。
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