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「もっと早く言えばよかった。ずっと逃げててごめん」
瞼を閉じれば浮かんでくるのは泣いてる顔ばかり。
もう笑う君の姿は思い出せない。
やっと全てが終わる。
「俺はお前を好きだと思えない。もう支えてやれない」
俯いた直。
けれど数秒して顔を上げる。
「桃なんかに支えてもらおうと思ってないよ」
その唇には噛んだ跡が薄く滲む。
ごめん。ごめんなさい。
最後まで冷たくて最後まで勝手で最後まで我慢させて。
こんなあたしを、こんな俺を思ってくれてたのに。
思わず浮かぶ涙を堪える。
泣いていいのは俺じゃない。
俺には泣く権利なんて無い。
「行きなよ」
直は泣かない。
きっとこの後1人で泣くんだろう…そこに俺は居てはいけない。
「今度はちゃんと向き合ってあげなきゃダメだよ」
「じゃあね」と言った直は出会った頃のように笑ってくれた。
俺が傷つけた分まで幸せになってほしい。
そう思うのも自分勝手だ。
けれど……足は自然と向かっていく。
まっすぐに伝え続けてくれた彼に今度は自分からぶつかる。
情けなくて格好悪いことをしようとしてるのに。
本当は内心ドキドキで怖いくせに。
身体は勝手に動いてしまう。
いつも子供だと突っぱねていたのに、これじゃもう言えない。
でも、どうしても今すぐ会いたい。
あの生意気で何を考えてるのかわからない彼に
会いたくて仕方ない。
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