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去っていく桃の背中を見るのは何回目だろう。
いつも自分に自信がなくて…自分の性癖を隠すように生きて、無理して笑って。
そんな自分が大嫌いだった。
初めて桃と会った時バカなやつだと思った。
底抜けに明るいおネェ口調の変なやつ。
どんな嫌味にも負けなくて、気づけば桃の周りはみんな笑ってる。
全てを隠す僕と対照的な桃。
「ねぇ、なんで笑わないの?」
桃との初めての会話はそれだった。
僕の上っ面の笑顔に気づいた桃は、それからよく話しかけてくれて…いつしか僕は桃の隣にいたいと思うようになっていたんだ。
眩しい桃を好きになって、隣に立ちたくて。
近づけば近づくほど次を求める。
恋人という位置付けになれても足りなくて。
いつかこの場所に立つのが僕じゃなくなる日が来るかもしれない。
他の誰かを選ぶかもしれない。
そう思うと止められなくて…僕は桃に次へ次へと求めてしまった。
時間が経つほどに2人の距離は離れ遠くなる。
自分のしたい事を、進むべき道を見つけた桃。今の場所にしがみつくことに必死だった僕。
目標に向かって頑張る桃を応援できなかった。
桃が何かを手に入れる度に感じたんだ。
自分との差を。
住む世界が違う現実を。
あの時の僕が抱いていたのは桃に対する劣等感。
それをぶつける術が無くて。
誰にも言えなくて誰かに知ってほしくて。
日々増えていく嘘と自分自身に刻む傷。
「しんどい」と言えば桃は「大丈夫?」と気にしてくれるから。
「苦しい」といえば側にいてくれるから。
引き留める為に嘘をつく自分に嫌悪して傷つけるんだ。
そうしたら許される気がしたんだ。
嘘をついて、傷をつけてまた嘘をつく。
そうやって繋ぎとめていく。
僕は桃との出会いを運命だと思おうとしていた。
本当にバカだったんだ。
僕はずっと桃に捨てられるのが怖くて
だから……桃なんて全て失ってしまえと願った。
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