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桃が弁護士試験に受かったと聞いた時。
僕にあったのは桃の成功を喜ぶ気持ちなんかじゃなく『ほら、やっぱり』だった。
『ほら、やっぱり』桃は僕と違う。
そうやって僕から離れて行くんだね。
『ほら、やっぱり』桃は僕を捨てるんだ。
『ほら、やっぱり』僕は必要ないんだ。
全部…自分が悪かったのに。
桃を試すしかできずに信じなかった。
確かにあった信頼も、愛情も、全てを壊したのは僕なのに。
自分を傷つけて繫ぎ止めた卑怯な僕なのに。
そんな僕を庇ってくれたのは他ならぬ桃だった。
桃の綺麗な身体に刺さるモノ。
それを握っているのは…振りかざしたのは、僕。
「ごめんなさい」を繰り返す僕に「大丈夫」と笑ってくれる。
「ごめんなさい」しか言えない僕に「泣かないで」と背中を撫でてくれる。
優しい優しい桃。
優しくて…冷たい桃。
好き、なのに。
好きだけじゃ上手くいかない。
好きで好きで届かなくてもどかしい。
捨てないで離れていかないでと言えたらよかった。
変な意地なんて捨てて桃を信じればよかった。
たとえ結果が変わらなかったとしても、出来ることをすればよかった。
いつからか「好き」という感情は自分を苦しめるモノに変わって、強く思えば思うほどに追い詰められていく。
1人になることが怖くて1番傷つけてはいけない人を僕は悲しませた。
傷つけて悲しませて…ようやく僕は桃を見えない籠に閉じ込めた。
離れていても桃は僕を忘れないし僕も桃を忘れない。
そんなものは何にもならない。
2人を苦しめるだけだ。
「あんな桃、初めてだったなぁ…」
僕が何をしても怒らなかった桃が、今は1人の子を思って感情を露わにする。
桃は変わったんじゃない。
僕が本来の桃を見なかっただけ。
何も知ろうとせずに好きを押しつけただけ。
目を背けた僕と向き合った彼。
どちらが正しいかなんて一目瞭然。
真っ直ぐな彼とならきっと上手くいく。
だって桃はとても真っ直ぐな人だから。
僕も次は自分を大切に出来る恋愛がしたい。
いつか胸を張って言えるように。
桃以上の人を見つけようと思った。
けれど今はまだ好きでいたい。
僕は……桃が好き。
今は、まだ。
だって僕と桃の出会いは、確かに運命だったから。
今度こそ桃が笑って過ごせますように。
僕の大好きな…出会った頃の桃の笑顔が見たいな。
ずっと我慢していた涙が頬を伝って落ちる。
それを見てやっと全てが終わったんだと実感した。
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