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「好きだと思った時から桃さんだけ見てたから。
どんな小さな仕草も癖も表情も見逃したくなくて、ずっと見てた」
大人になりきれてない甘い声。
洗練されたとは言い難くて、まだ発展途上のくせに。
それなのに心に染み渡る。
「弱いくせに意地っ張りで、キャパが小さいくせに欲張っちゃうから空回りばっかりしてる。
頑固でヘタレで煩くて見てると疲れるし、ワケわかんなくてイライラする」
「ちょっと待って。悪口にしか聞こえないんだけど!」
「でも、目が離せなくて守ってあげたい。
こんなに嫌なところがあるのに、気づいたらいつもあんたを思ってる」
ストレートで嘘のない歩ちゃんの言葉。
嫌なことは嫌だとハッキリ言える強い意志。
あたしにないモノを持っている彼はとても眩しい。
頬に触れる手はやっぱり冷たいけれど、その瞳は驚くほどに温かく心地いい。
「俺はあんまりベラベラ喋る方じゃねぇけど、思ったことは言うって決めてんすよ。
だって何も言わないで後悔すんのって無駄だと思いません?後悔も反省も行動してからすればいい」
「……反省なんて全然しないくせに」
耳に移動した歩ちゃんの手が輪郭をなぞるように動き、くすぐったい。けれど心は次を期待して仕方ない。
「俺、自分の選択は間違ってない自信があるんで。
反省する必要なんかないです」
「あぁ…。うん、そういう子だったわね」
いつも自信たっぷりで偉そうで意地悪。
何も考えてないフリして、本当は先を見ていて抜け目がない。
花火よりも鮮明に覚えている彼の真っすぐな瞳。
あの時すでに捕まってしまっていたのかもしれない。
「だから、どんな桃さんでも受け止めてあげる。
俺の選んだ人に間違いなんてないから」
引いてしまっても仕方ないあたしの過去。口にすれば軽蔑されると思っていたのに。
それを聞いても間違いじゃないと言い切る。
「桃さんは間違ってない。
俺が一生かけて証明してやるよ」
「一生……だなんて軽々しく言ってバカじゃないの」
「俺、嘘はつかないんで。覚悟して答えてくださいね」
一生、思っていられるだろうか。
あたしは歩ちゃんを好きでいられるのだろうか。
また前のように、この気持ちが薄れていかないだろうか。
「桃さん。後悔も反省も行動してから、ね?」
躊躇うあたしの頬を抓り教えてくれる。
やっぱり…あたしのことを見ていてくれてる。
そんな君に賭けてみよう。
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