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「……うっざ」
何がって、それは目の前で隠れて手を握り合ってるバカップルがだ。
きっとMの方はバレてないと思ってんだろうが、もう片方は違う。
隙をみて俺を睨んできやがる。
それこそ視線だけで殺す気かっつーぐらい。
俺の一言が気にかかってる慧の不自然さに気づいたんだろう。
それは目敏いからなのか、それとも慧の全てを知っているからなのか……多分どちらもだろう。
兄貴は慧をよくわかってる。
言い方は悪いが、わかってて上手いこと扱ってる。
その点、慧はどうだ。
全然知らない。
理由は兄貴が何も言ってないからだ。
まだそのタイミングじゃないのかもしれない…けれど。
兄貴は1人でなんとかしようとしてるはず。
上手くいけばいい。
知らないうちに全てカタがつくなら、それに越したことはない。
もし駄目だったら?
駄目だったら…どうなる?
「……だから脆いつってんだろ」
「なにが?イクラ?イクラは脆いものよ?」
漏れた声に隣の桃さんが反応する。
きっとこの人もある程度は知ってるはずなんだ。
ジッと見つめるけれど、その表情からは何も読み取れない………というより赤くなってきた。
「…………」
「え、なに?ま……まま、まさか!!!」
パッと口元を覆って俯き、そろそろと顔を上げる。
上目遣いで俺を見て恐る恐る尋ねてきた。
「……海苔ついてた?」
「は?」
「歯に海苔ついてたんでしょ?!もう、言ってよーっ!」
マジわかんない人。
鋭いようで鈍くて、でも頭のいい人。
「桃さん見てると、なんか和む」
全然癒し系じゃないし24時間喋ってそうな人だけど。
「あら、それ褒めてる?」
「そこそこ」
「やだ嬉しいっ!!」
すごく嬉しそうに笑う姿になんだか温かくなる気持ち。
「さぁ次は何巻く?」
「まだ食べんのかよ」
結構食べたのに……どんだけ食わせる気だこの人。
自分は体型のこと気にして食べないくせに、俺にはどんどん勧めてくる。
まるで母さんみたいだ、なんて言ったら拗ねるだろうから言わない。
「当たり前でしょ!食べなきゃ大きくなれないわよ?」
頬を膨らましながら注意する桃さんの耳元に唇を寄せる。
ちょっとだけ前のカップルに触発された…ってのが本音だ。
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