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宣言通り、夜になって恒兄ちゃんは父さんを連れて帰ってきた。
父さんに直接会うのが久しぶり過ぎて何から喋っていいのかわからない。
「進路の話か」
いきなり始まる会話。
前置きどころか、元気か?と聞かれることもない。
この人にとって俺なんてどうでもいいんだと思い知らされる。
「お前の好きにすればいい。進学するなら金は出してやるし就職先に困ってるなら言えばいい」
「……そう」
「他に話はあるか?」
たった数分。
顔を合わせて数分で話を終わらせようとする父さん。
……なんでだろう。
俺が何をしたんだろう。
立ち上がった父さんが俺を見て、目を伏せた。
「お前の好きにすればいい」
さっきと同じ台詞。
勝手にしろと念を押された気がする。
気がするっつーか確実だろ。
そのままリビングから出て行き、少しして玄関の扉が閉まる音が聞こえた。
どうやら今日もホテルに泊まるらしい。
食事すらとらず、この家にいた時間は数分だけ。
…久しぶりに会う息子がいようがいないが関係ない。
もしかしたらあの人にとって、出来の悪い俺なんて息子ですらないのかもしれない。
こんな時に星兄ちゃんがいたら…って考えて、それを消すように頭を振った。
ダメだ。そんなこと考えてたらリカちゃんに悪い。
やたらと、ふかふかするソファーに身を沈める。
俺の家のよりも絶対に高いし上質なはずなのに落ち着かない。
この部屋も寝る為に用意された部屋も落ち着かない。
まず色が気に入らない。
家具は…あれだ、黒がいい。
でもって芳香剤は甘めで…それにここは物が多すぎる。
例えば部屋の真ん中に大きなソファーがあって、ラグが敷いてて…でもって観葉植物があって。
カーテンは白じゃなくて暗めがいい。
そんなことを考えてて自嘲した。
「それ、リカちゃんの部屋じゃん」
思い描く理想の部屋はあの男の部屋。
匂いも全てあの男のもの。
もう話はついたんだから明日帰ってやろうか。
ここに居るよりも、あの部屋で待っている方が何万倍もいい。
「リカちゃんの部屋に帰りてぇ」
「それは恋人の名前か?」
背後から聞こえた声に振り向けば、父さんと一緒に出て行ったはずの恒兄ちゃんが立っていた。
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