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ゆっくりと部屋に入ってきた恒兄ちゃんは、昼間と同じ場所に座る。
向かい合う俺を見て小さく笑った。
「お前に恋人が出来るなんてな。いつも兄さんの後ろに隠れてたのに」
「何年前の話だよ。もう16歳なんだから付き合ってる相手ぐらいいる」
それは誰だ?って聞かれても答えらんねぇけど。
相手が同性の男で、しかも担任の先生だなんて絶対に言えない。
「リカちゃん、か。」
「なに?もしかして恒兄ちゃんの彼女もリカ?」
「いや違う。それに彼女というより婚約者だから」
「え?!結婚すんの?」
知らなかった事実に驚く俺に恒兄ちゃんは頷いた。
「来年の春にな。式はお前にも出てもらう」
「それはいいんだけど…」
堅物で真面目で父さんに似て仕事優先の恒兄ちゃんが結婚。そんな相手がいたことに驚きだ。
「彼女ってどんな人?」
「業務提携してる会社の一人娘」
それはいわゆる『お見合い』じゃねぇか。
今時、政略結婚なんてありえねぇ。
いや…あの父さんならしかねないけど。
何も言えずに俯く俺に、恒兄ちゃんは「違う」と口を開いた。
「強いられて結婚するんじゃない。ちゃんと愛はあるよ」
「本当に?」
「お前に嘘をついてどうする。
そろそろ俺も身を固めるいいタイミングだから」
25歳で結婚って早くないか?
「お前はどうだ?結婚とか考えるのか?」
「俺まだ高校生なんだけど」
「将来的にだ。その……リカちゃんと」
考えるも何も答えは『できない』だ。
俺もリカちゃんも男なんだから『一緒にいよう』という口約束はできても、それを形にすることは無理だ。
でも、もしできたら?
そしたら俺は。
「そういうのわからない…けど、ずっと一緒にいたい」
それが叶うなら離れても不安なんて無くなるのに。
「ずっとか。それは若気の至りか?それとも…」
「リカちゃんなら大丈夫だと思うから。
俺にはリカちゃん以外考えられない」
自分で言ってて照れた。
実の兄ちゃんに何を言ってんだよ。
これじゃリカちゃんが普段、歩に言ってることと変わらねぇし。
「ま、無理だってわかってるけどな!」
勢いよく立ち上がり、部屋に戻ろうと歩き出せば、恒兄ちゃんが俺を呼ぶ。
「慧」
ここに来て初めて呼ばれた名前。
父さんが呼ぶことのない名前。
「明後日の夜は3人で食事しよう。
もう予約してあるから迎えに来る」
恒兄ちゃんがそう言ったタイミングで俺のスマホが震えた。きっとリカちゃんだ。
「慧?」
「あ、うん。わかった!!じゃあお休み!!!」
もうそれどころじゃなくて急いで部屋を出た。
「………幸せそうな顔できるじゃないか」
恒兄ちゃんが苦笑いしながら呟いたけれど、それは俺には聞こえなかった。
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