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「遅いんだよ。何時だと思ってんだてめぇ」
通話ボタンを押すや、俺の第一声はそれだった。
精一杯の恨みを込めたはずなのに相手は平然と『12時前』と答える。
「俺が寝てたらどうしてくれんだよ」
『2コール目で出たやつの台詞じゃねぇよな。っつーかこれ初日の会話と似てんだけど、お前もっと話のネタ無いわけ?』
平然どころか俺をからかうような言葉まで付け加えるリカちゃん。今日は昨日と違って声も穏やかだ。
『明日の昼に帰ることになったんだって?』
「あぁ、まぁ」
『帰ったらちゃんと宿題しろよ。どうせまだ終わってねぇんだろ?』
「終わってるし」
誰かさんが担当の英語だけはどの教科よりも先に終わらせたっつーの。
『んじゃ帰ったらみてやるよ』
「別にテストじゃねぇんだからいい」
リカちゃんに勉強をみてもらうロクなことがないことを知っている俺は即座に断る。
『お前まさか適当に埋めただけじゃないよな?』
「適当じゃない、けど」
『勘も適当に入るからな』
「…………」
『図星かよ』その言葉に続いて犬の鳴き声が聞こえる。
「犬飼ってんの?」
『いや、近所の犬なんだけど、うるさいんだよ。
俺が会いたいのは犬じゃなくてウサギなんだけどな』
さらっと出た台詞に一瞬何を言われたかわからなくなって固まる。
『おい。ちゃんと聞いてるのか?』
「………聞こえてる」
言葉は簡単に心に落ち、必死に抑えていた本音を暴こうとする。
『生意気でワガママで寂しがりなウサギを撫でまわして甘やかしたい』
「あっそ」
『敏感な耳を噛んで小さな乳首も噛んで、大事なトコロは縛って善がらせたい』
「それ苛めてんじゃねぇかよ…お前はどこでも、いつでも変態過ぎるだろ!」
『バレた?』と笑うリカちゃんの声は離れる前と同じ。
初日のように震えたりしない。意地悪な声だ。
冷たくない温かい声に安心して目の奥が痛くなる。
『慧。思ってることあるなら言えよ』
1日俺を放っていたのはリカちゃんなのに、それを受け止めてくれるのもリカちゃん。
味方のいない家で俺が頼れるのはやっぱり1人だけ。
「会いたい。リカちゃんがいないと寂しい」
それを口にした途端、我慢してたのがバカみたいに気持ちが膨らんでいく。
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