アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
469
-
状況が飲み込めない俺にリカちゃんはフッと笑う。
それは悪戯を思いついた子供のように楽しそうな笑みだった。
「直接お会いするのはお久しぶりですね」
それは父さんに向けての言葉。
普段と違うリカちゃんの声と様子になぜか俺が緊張してしまう。少し固さを感じる外行きの声だ。
「ご無沙汰しております」
父さんに軽く頭を下げたリカちゃんが今度は恒兄ちゃんを見る。
恒兄ちゃんの顔が少し固まり、手で口元を隠してしまった。リカちゃんが声を殺して喉の奥で笑った。
リカちゃんを見ていた父さんの顔が俺に向く。そしてリカちゃんに戻って、次に恒兄ちゃんに向いて頷く。
「恒二。後はお前に任せる」
「でも…」
「獅子原君、詳しい話はまた今度でお願いしたい」
「でしょうね。こちらも今は手一杯ですので」
俺と恒兄ちゃんを置いて会話を続ける父さんとリカちゃんの2人。
こっちは何が起きているのかわからないのに話は纏まったらしく、父さんは去っていく。
残されたのは俺と恒兄ちゃんと…1人楽しそうなリカちゃんの3人だけ。
「さて」
俺から身体を離したリカちゃんがネクタイを緩め髪を掻き上げる。一気に変わった雰囲気。
キッチリしてるリカちゃんはカッコいいデキる男って感じだけど見慣れない。
俺はこっちの意地悪で性格の悪そうなリカちゃんの方が好き。
「どこから説明してほしい?」
どこからって。
そんなのもちろん。
「なんでリカちゃんがここにいんの?」
それに決まってる。
「……リカちゃん」
恒二兄ちゃんの呟きに、しまった!!と気付く。
俺の彼女の名前はリカちゃん。
そして…目の前にいるこの黒髪の男もリカちゃん。
「まさか、本当に獅子原さんが」
「だから言ったろ?お前の弟は俺にメロメロだって」
「でも本当に慧が男を?いや、でも慧が選んだ人だし…それでも、」
ブツブツ言ってる恒兄ちゃん。
勝ち誇った顔でそれを見下ろすリカちゃん。
完全に存在を忘れられてる俺。
「おい。いい加減俺にもわかるように説明しろ」
リカちゃんの袖を引っ張り睨みつける。
「知りたいなら『教えてください』だろ慧君」
「てめぇ調子乗んなよ」
「そんな生意気なこと言うなら教えてやんない」
「このクソッ!!!」
リカちゃんの肩を殴る。何度か肩に当たった手が掴み取られ、ガブッと噛まれた。
「何すんだよ!!」
「ってかさ、なんで気付かないんだよ。お前がトイレに立った時、追いかけたのに」
「そんなの知るわけねぇだろ。声かけてこねぇし、匂いだっていつもと違……そうだ匂い!この匂いなんだよ」
いつもと違う香水の香りに問いかける。
「いつものは強すぎるから真夏はこっち。言ってなかったっけ?」
「聞いてない!!」
「あー、ごめん。今度買ってやるから拗ねんなよ」
「その言い方、絶対に悪いと思ってないよな?!」
別に拗ねてない…けど同じの買わせよう。
そうしたらいつでもリカちゃんと同じ匂いでいられる。
苦笑いしながら俺の髪を弄るリカちゃんとそれを払い除けようと手を振る俺。いつもと同じ2人で、なんら変じゃない。
けれど、それを見る恒兄ちゃんは驚き固まる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
469 / 1234