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「なんか愛されてるね、俺」
リカちゃんが俺の腰に腕を回し抱き付いてくる。
そうやってしみじみと言われると恥ずかしくて逃げたくなる…けど今は我慢しようと思った。
せっかく数日ぶりにリカちゃんと会えたんだから。
会いたくて会いたくて仕方なかったんだから。
「まぁタネ明しをするとだな、今日のことは恒二から聞いて知ってた」
「え?!」
「お前のことで前々から恒二と連絡とってたんだよ。
アイツこっちの都合なんて関係なく電話してくるし面倒で無視したら家にもかけてくるし…」
「それってもしかして前の?」
前に留守電のことを言ったときを思い出した。
勧誘とか言って面倒くさそうな顔してたリカちゃん。
あれは恒兄ちゃんからの電話だったんだ…。
「昨日のお前かなり参ってたし、その上今日のこれだろ。
どうせ恒二のことだから何のフォローも出来ずにドツボにハマってくのは簡単に想像できたからな」
「お前……本当に抜け目ないのな…」
「当たり前だろ?あとは新幹線じゃ時間的にキツイから飛行機で来ただけ。飛行機なら1時間は短縮できる」
「飛行機……全く思いつかなかった」
俺よりも何歩も前を見て行動するリカちゃんをすごいと思った。『すごい』以外の言葉が見当たらないぐらいだ。
ここまで考えてくれて、ここまでしてくれるなんて…。
「だから嘘はつかないって言っただろ。俺はお前を1人になんかしないって」
「…リカちゃん」
「お前をわかってやれんのは俺だけだからね。
もしかして惚れ直した?」
もう溢れるぐらい惚れてるよ。
他に何も考えられないぐらいリカちゃんで一杯なんだよ。
素直に言えない代わりに握ったままの指に頬ずりする。
リカちゃんは黙って見ている。
「俺…やっぱり父さんにどうでもいいって言われた。
お前の好きにしろって目も見てくれなかった。
俺なんかバカだし何の役にも立たないから、あの人には必要ないんだよ」
リカちゃんがこんなに俺を想ってくれてるのに、実の父親からは邪魔者扱いされて。
家族って何なんだろうなって落ち込んでヤケになって。
それを寂しい気持ちをリカちゃんにぶつけることで紛らわそうとした。
「なんにもしてないのに」
「何もしてないからだろ」
返ってくるのは想像していなかった言葉。
少し棘があるように感じる。
「何もしてない、何も知らないのに決めつけてんじゃねぇよ」
「なんで怒んだよ。何も知らないって…知らないのはリカちゃんの方だろ?!」
俺が何を言われたか知らないのはリカちゃんだ。
俺があの人にどんな風に見られたか知らないのはリカちゃんなのに。
なんで俺が責められなきゃなんねぇんだよ。
「俺が怒られる意味がわかんねぇ」
このままじゃ言い合いになりそうで、リカちゃんの頭を退かし立ち上がる。
その場から逃げようとした俺の腕をリカちゃんが引っ張った。
「っ!!急に何すんだよ?!」
いきなり強い力で引かれ、俺はリカちゃんの身体にのしかかるように倒れる。
痛くはない…が、その急な行動に驚き声をあげればリカちゃんは寝転んだまま強く抱きしめてきた。
責めるような言葉とは真逆のそれに戸惑う。
「俺が何に怒ってるかわかんないの?」
「わかんねぇから聞いてんだろうが!」
「だよな。わからないことは聞く…お前俺には出来るのに、なんで父親には出来ないんだよ」
「……」
「お前さ、言われた言葉の意味とか聞いたことないだろ。
全部自分で勝手に解釈して勝手に決めつけて、それが正しいと思って疑わない。
本当お前ら親子って頑固なとこ似すぎ」
リカちゃんの雰囲気が和らいで俺の髪を指に巻き付け遊びだす。
「まぁ…聞いたところで向こうも頑固だしな。
今回は特別に俺が教えてやるよ」
ずっと知らなかった…初めて知る父さんの話に、俺は何も知ろうとしなかった自分を責めた。
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