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「お前はさ、なんで俺を話題に出すんだよ」
「別にあんたを出してるつもりは…ただ、あたしたちって共通の話題が無いのよ」
桃が少し寂しそうに言う。
たしかに歩と桃の共通…といえば俺達の話題だろう。だからといって俺と歩を比べるようなことを言ってしまったのはいただけない。
歩はプライドが高い。そして自分の至らないところを知っている。
まだまだ子供でそれに葛藤もするだろう。理想に近づけない自分に焦れることも多いだろう。
そんな時に恋人にダメ出しをされるとキツイ。
高校生といえども歩は1人の男だ。ちゃんと歩自身を尊重しないといけない。
まぁ…桃に悪気はないのだろうけれど。
「お前ら本当よく言い合いするよな。そんなんでやっていけんの?」
「うるさいわね!お互いのことを知る上で言い合いは必要不可欠よ!」
「ふぅん。俺はウサギと言い合うことは無いけどな」
桃がグッと唇を噛む。
コイツ本当にわかってねぇ。
俺達とお前らは違うのに。比べても仕方ないのに。
「どうしたらリカとウサギちゃんみたいに上手くいくのかしら」
「さぁな」
「なんだかんだ言ってあんた達仲いいじゃない。
コツを教えなさいよ」
コツ…ねぇ。そんなのあるなら俺だって聞きたいぐらいだ。
それが無いから人は別れたり付き合ったりを繰り返すんだろうが。
「お前はさ、歩のどこがいいんだよ」
「どこって言われても」
「顔?身体…ってまだヤッてないか。それじゃあ性格?」
我が弟ながら褒められた性格ではないことはわかっているけれど聞いてみる。すると桃は少し考えて答える。
「わからない。生意気なところを嫌だと思う時もあれば可愛いと思う時もあるもの。
そんなのって時と状況で変わるモノでしょ?」
「だろうな。顔も声も数年経てば多少なりとも変わってるだろうし」
何が言いたいんだって表情の桃を一瞥して俺はタバコに火を点けた。そろそろウサギが戻ってくる頃だろう。
これは桃だけじゃなくアイツへと向ける言葉でもある。
「思いは募れば募るほど言えない。好きなところなんて言い出せばキリがない。だから俺は毎日言葉で態度で伝えたいって思うけど?」
恋愛とは打ち付けては引いていく波のようなもの。
どれだけ近づいても絶対に1つにはなれない。
それでも誰よりも近くにいたい。誰よりもわかってやりたい。
嫌なところが無いなんて言えないけれど、それさえ愛おしいと思える。
別に同じだけ気持ちを返してほしいとは思わない。
これは偽善でも犠牲でもない。
今この瞬間を2人で過ごせるのならば俺は何を差し出しても構わない。
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