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俺にしがみつく桃ちゃん。それを楽しそうに見物しているリカちゃん。
心の中で桃ちゃんに何度も謝り、俺は寝室に入れまいと首を振る。
そして今度は家の方のインターホンが鳴った。
「残念だったな、桃。ここにお前の味方はいねぇよ」
桃ちゃんが俺の身体から這いずり落ち、項垂れる。
「ご、ごめんね桃ちゃん」
「ウサギちゃんまで悪魔に魂売ったのね…ううん、わかってた。いつかはこうなるって思ってたわ」
これから美馬さんにされるであろうことを想像した桃ちゃんが絶望に打ちひしがれる中、玄関の扉が開く音がした。
「思ったより早かったんだな」
リカちゃんの声は微かに聞こえるけれど美馬さんの声は聞こえない。
「なんでマスクしてんの?このクソ暑い真夏に」
夏風邪でも引いたのかマスクをしているらしい。それなら聞こえなくて当然だ。
「しっかし…すげぇ色。若いって怖ぇな」
そんなリカちゃんの声が聞こえ、リビングへの扉が開かれる。
背中を向けている桃ちゃんには見えない。出来るだけ身体を小さくしているけれど、きっとアイツにはこっちなんか丸見えだ。
ゆっくり近づいてきて俺たちの前に立つ。マスクを外した顔は、やっぱり見慣れたあの顔。
シッと唇に指を押し当て俺に黙るよう合図してしゃがみ込む。
頭を抱え込む桃ちゃんの耳元でアイツが笑った。
「やっぱりここにいた。帰りますよ、桃さん」
桃ちゃんを迎えに来たのは美馬さんじゃなく歩だった。
「え?」
戸惑った桃ちゃんがゆっくり顔を上げ、歩の姿を確認すると瞬きを繰り返した。
桃ちゃんも美馬さんが来ると信じ切っていたらしい。
「なん、で歩ちゃんが?」
「なんでって…桃さんの彼氏は俺でしょ?それなら迎えに来るのは俺に決まってんじゃないすか」
「え?!だってリカが保護者って」
扉にもたれて立っていたリカちゃんがニヤッと笑って顔の横でスマホを振る。
「誰が豊を呼んだって言った?お前はもう歩の管轄なんだから保護者は歩だろ」
「っ!!騙したわね?!」
「騙してねぇよ。俺は一言も豊を呼んだなんて言ってない。お前が勝手に勘違いしただけ」
言ってはないけれど、あの態度は確実に騙す気だったはず。本当に性格が悪いリカちゃんに俺は呆れてしまう。
けれど…多分これが正しいんだと思う。
俺は何もしないなんて言ったくせに、やっぱりリカちゃんは優しい。
2人が仲直りできるタイミングを作ったのはリカちゃんだ。偉そうに笑う俺様は、素直になれない2人に小さな意地悪と大きな優しさを見せつける。
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