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部屋の端に置いたままの桃ちゃんの荷物を歩が持つ。
「行きますよ桃さん」
「……えっと」
桃ちゃんは気まずいのかチラチラと視線を向けるだけで動こうとしない。
だから俺は桃ちゃんのシャツの裾を摘まんで合図を送った。気づいた桃ちゃんに耳打ちするよう俺は小声で言葉をかける。
「桃ちゃん。歩って究極の面倒臭がりだからさ、こんな時間にわざわざ来ないよ。それって桃ちゃんが特別だからだと思うけど」
歩は偉そうだし何考えてるかわかんないヤツだけど、こうやって迎えに来るってことは、きっと歩本人も気にしてたんだろう。
俺が言えることじゃないけど…いつまでも意地を張ってちゃダメな気がする。
歩が行動したんだから次は桃ちゃんが素直にならなきゃいけない。
「桃さん」
3度目の呼びかけに桃ちゃんがやっと立ち上がり、歩の元へ歩いて行く。
「荷物はこれだけ?」
「…うん」
さっきまで騒がしかったのが嘘みたいにおとなしくなる桃ちゃん。
それを見て俺は思った。
桃ちゃんも歩が好きなんだなぁって。きっと俺やリカちゃんには見せない顔があって、歩にだから言っちゃうこともあるんだろう。
それは歩も同じ。桃ちゃんと一緒の時の歩は少しだけ雰囲気が柔らかくなる。
「おじゃましました」
「ん。もうケンカする度にウチに来るなよ」
「別にあんたに会いに来たわけじゃないわ!あたしはウサギちゃんに…」
「それも駄目。いくらお前でもコイツは貸せない」
悔しそうにリカちゃんを見た桃ちゃん。少ししてその顔は緩んで笑う。
「やっぱりリカみたいなのは無理だわ」
「俺の方こそお前みたいな面倒臭いのお断りだ」
ちょっと悔しい。
2人の慣れた空気感とか、見えない信頼感とか。
恋人じゃなく友情。それなのに羨ましいと思ってしまう。
それは歩も同じらしく、立ち止まったままだった桃ちゃんの腕を掴んだ。
「じゃあそういうことで」
「ハイハイ。俺に嫉妬するなんて、歩君も可愛いとこあるのな」
「嫉妬なんかしてねぇ!」
足音荒く帰っていく歩と引きずられながらも嬉しそうな桃ちゃん。
歩をからかいつつも優しく笑っているリカちゃん。
2人が帰って鍵を締めたリカちゃんが戻ってくる。
「マジ疲れた…。いい加減にしてほしいよな」
「リカちゃん」
「ん?」
タバコを咥えようとしたその手を掴む。
「どうした?」
「……続き、シたい」
小さな嫉妬を打ち消すように求めればリカちゃんは叶えてくれる。
「やっばぁ…今日は俺が慧君に食べられちゃいそう」
桃ちゃんにだってあげない。
リカちゃんは俺だけのモノだ。
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