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夏休みが終わるまであと2日。リカちゃんが学校へ行って俺は家に1人…なんかじゃなく予想外の人と一緒にいる。
「こんなのしか無いけど、どうぞ」
その人の前にグラスを置きチラッと見る。今日もやっぱり凛々しい顔してる。
「気を遣わせてすまない」
そう言ってその人…美馬さんがグラスに手を伸ばそうとした。けれど美馬さんよりも早く横から伸びてきた手がそれを奪ってしまう。
「いただきー……って何これ、なんか変な味」
「歩!それは美馬さんの分だろ!」
「美馬さんの分って俺の分は?誰かさんが俺の分入れてくれないから仕方ねぇよな」
グイッと一気にグラスの中身を飲み干し、歩が平然と言う。
昼過ぎに今から行くとLINEを送ってきた歩は1人じゃなく、なぜか美馬さんと一緒だった。
「慧って飲む物まで兄貴に合わせてんの?ありえねぇ」
「今回はたまたまだ!ってか、お前はいつも勝手にすんだろ」
「えー。慧君ってば贔屓するんだ?なに、美馬さんが兄貴の友達だから?それなら弟の俺に媚び売った方がよくねぇ?」
嫌な笑い方をした歩が紫煙を吐き出す。金髪にして余計に性格が悪くなったんじゃないかと思った。
「お前マジ最悪!!!金髪だからって調子乗んなよ?!今時ヤンキーぶってだっさ」
「はぁ?ヤンキーとかいう方がダサいんですけど」
「いっそ坊主にでもすれば?そしたらリカちゃんと比べられることねぇんだし」
「アァ?俺の髪とアイツは関係ねぇし。なんでも兄貴基準で考えてんじゃねぇぞ恋愛バカ」
睨みあう俺達の間に入った美馬さんが大きな手を上げる。無言なのに感じる圧力に俺と歩は黙るしかなかった。
「まったく…お前たちは昔のリカと星一とは真逆だな」
その言葉に俺と歩の視線が同時に美馬さんに向かう。
「ん?あぁ、リカも桃も星一の話はしたがらないか。
あいつらは律儀というか頭が堅いから…聞きたいか?」
その問いかけは俺に対して。
迷わず頷けば美馬さんは柔らかく笑って続ける。
「そうだな、桃は今と変わらない。煩いし面倒臭いオカマだった。逆にリカは今より落ち着いていて無口だったかな。あんまり感情の起伏が無かったというか…まぁ、それを崩すのが星一なんだけど」
美馬さんの表情が何かを思い出したのか崩れて笑う。
美馬さんのこんな笑い顔を見たのは初めてで、びっくりした。
いつも微笑むぐらいだったのに、本当に楽しそうで。
4人で過ごした時間がすごく大切なんだってわかる。
「本当、リカと星一は双子かと思うぐらい似てた。もちろん外見は違うんだけど、その思考や行動がシンクロするんだ。お互いの足りないところを補うんじゃなくて、なんて言うかな…」
少しだけ考えて顔を上げる。
「リカに無いモノを星一が持っていて、星一に無いモノをリカが持ってる。
あの2人は、きっと合わせて1つになるように作られたんだと俺は思ってる」
美馬さんにそこまで言わせるほど近かった2人。
自分の分身のような星兄ちゃんを目の前で失ったリカちゃん。
あの日アルバムに映っていたリカちゃんを思い出して胸が痛む。
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