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「お前は進路とかちゃんと考えてんの?この前実家帰ったんだろ?」
「あー…うん、まぁ……」
答えを濁した俺に歩の呆れた視線が突き刺さる。
「その返事は考えてねぇのな。もう2年の夏だし学校始まったらすぐ面談あんだろ」
俺なんで金髪のヤツに諭されてんだろ。
「いつまでも今のまんまじゃいらんねぇ。俺もお前も拓海も自分で考えなきゃいけない」
歩が少しだけ遠く感じた。
「拓海は美容の専門に行くだろうし、俺は国公立狙う」
「国公立?行けんの?」
「行けるじゃなくて行くんだよ。その為に兄貴や桃さんに勉強教えてもらうしバイトも減らす」
バイトの鬼の歩が働く時間を減らしてまで勉強する理由。
「大学なら私立でもいいじゃん」
「それは無理。俺、学費は自分で払うって決めてるから」
買った本をチラッと見て歩は続ける。
「別にいい大学出るのが全てじゃねぇけど…俺は少しでもあの人に近づきたい」
「あの人って、桃ちゃん?」
「以外に誰がいんの?俺はあの人と同じ所に立てる男になる」
「それって弁護士になるってこと?」
「弁護士じゃねぇけど…まぁそんな感じ」
自分で考えて自分で将来を決めた歩。
子供の頃からの夢を追いかける拓海。
俺は……どうなんだろう。
毎日同じ生活をして、困ったらリカちゃんが助けてくれる。先のことなんて考えたことあったけ。
「お前は何かしたいことないのか?」
「したい、こと」
「行きたい大学とかじゃなくて、なりたい職業とか勉強したいこととか」
少し考えて無いことに気付いた。
何になりたいとか何をしたいとか。
それどころか卒業後のことなんて考えたことない。
あと1年半もすれば俺は高校を卒業する。
それはリカちゃんの生徒じゃなくなるってこと。
一緒にいる時間が激減することだ。
「……俺は今のままがいい」
今みたいに『おはよう』って言って一緒に朝を迎えて、学校でコッソリ視線が合って。
たまに人目を忍んで会って。夜は2人で過ごす生活。
『今』をずっと続けたい。
「は?留年でもする気か?」
「しねぇけど」
「なら卒業して働く?」
それもアリかもしれない…けど。やっぱり少し違う。
黙る俺に歩が口を開く。
それは、からかうでも意地悪を言うでもなく真剣で、それでいて厳しい一言。
「慧。言っとくけど今の生活は絶対に続かない。
お前も兄貴も別々の生き方をしなきゃいけない」
「んなのわかってるよ」
「わかってねぇだろ。お前さ、兄貴がいなくなったらどうすんの?今のままじゃ何も出来ないし自分で何も考えらんねぇ人形じゃねぇかよ」
冷たく思える一言。
それに言い返せないのは、歩は間違ってないからだ。
俺からリカちゃんをとったら何も残らない。
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