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「そういうのって兄貴と相談しねぇの?」
そう言えば「考えろ」と何度も言われたけど相談ってしたことない。
リカちゃんは俺が話せばきっと聞いてくれる。
一緒に考えてくれる人だってわかってる…けど。
「お前あれだろ。兄貴に好きにしろって言われんのが怖いんだろ」
「───っ!」
見事に言い当てられて息が詰まった。
「兄貴って基本お前の自由にさせるしな。でもってソレ言われたらお前ケンカふっかけそうだし」
その光景が簡単に想像できてしまう。
リカちゃんは絶対に俺の進路に口出さないはずだ。俺のしたい事をさせてくれる自信がある。
「好きにしろって言ってくれんだから好きにしたらいいじゃん」
「でも……それって、なんか寂しくないか?」
もし俺が他県に行くって言ったらリカちゃんはどうするだろう?引き留めてくれるかな。
少し考えてみてそれは無い気がする。
「歩は桃ちゃんに相談したのか?」
「なんで?自分の将来のことだから自分で決めた。母さんには言ったけど桃さんには言ってねぇよ。もし言って実行できなかったらダサいだろ」
歩は強いと思う。そして俺にそれは真似できない。
自分で考えて自分で選ぶって難しい。
「俺は…とりあえず近場の大学行くことにする」
「えらく簡単に決めるのな。お前それがこの先に繋がるってわかってんの?」
「わかってる」
「全然わかってねぇよ。大学行くってのも兄貴の近くにいたいからって理由しかねぇクセに」
それの何がいけないんだ。
俺はリカちゃんと離れたくないし、ずっと一緒にいたい。
たとえ今ほどの時間はなくても近所の大学なら一緒にいられる。
それが俺の答えだ。誰にも文句は言わせない。
「お前さ、俺が前に選ばれる方が辛いって言ったの覚えてる?その意味わかってねぇだろ」
そんなこと言われたっけ?歩には普段から散々言われてるから覚えてない。
出入口の近くで話す俺たちをチラチラと店員が見る。
「なんか最近の歩って口煩い。金髪野郎に説教とかされたくねぇし」
これ以上こんな話をしたくなくて俺は出口に向かった。
そして、その足は止まる。
なんで?仕事だって言ってたじゃん。
今日も朝から夜までミッチリ働かされるって、学生は夏休みでいいなって言ってたじゃん。
残り2日ぐらい休ませてくれよって笑いながら着替えてたピンストライプのスーツ。
薄いピンクのネクタイなんて珍しいって言った俺に「今日はこれの気分」って答えた偉そうな顔。
横顔でも見間違えない高い鼻すじ。薄い唇。左目尻にあるホクロ。
真夏は使い分けてる少しだけ薄い甘い匂いに…今朝俺の名前を呼んだ香水よりも甘い声。
「そこ段差あるから気をつけて」
なんでそんな優しい声出してんの。
なんでそんな気にかけてやってんの。
立ち止まった俺の目の前をリカちゃんが歩いていく。
隣に知らない女を連れて。
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