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「課題終わってるなら早く寝ろ。新学期早々に遅刻とかあり得ねぇからな」
「え?」
「俺は仕事残ってるから帰る。ちゃんと内鍵も締めとけよ」
玄関へ向かおうとする背中に思わず手が伸び、リカちゃんが部屋着に着ているTシャツの裾を掴む。
「一緒に寝ないの?」
「仕事があるんだって。何時までかかるかわからないから今日は別々」
「今日はって…今日も、じゃん」
気にしてないフリしてたのに出てしまった言葉。わざと触れないようにしてたのに。
「昨日も来なかったくせに」
「気づいてたんだ?」
リカちゃんは小さく笑って俺の頭を撫でる。前髪を上げ、現れたおでこにチュッとキスをして身体を離した。
「悪いけどしばらくは別々」
「なんで?なんで別じゃないとダメなんだよ」
「本当に忙しいんだよ。朝も起こしてやれないと思うから自分で起きて」
それは本当…なのか?勘ぐる俺に近づいてくるリカちゃんの顔。
今度はちゃんと唇同士が触れるけれどいつもの深いキスじゃない。外されないメガネがこの先はお預けって言っている。
「じゃあ明日学校で。絶対に寝坊すんなよ」
玄関の扉に手をかけたリカちゃんに応えるように俺の口が知らず知らずのうちに動いた。
「リカちゃん。2学期から新しい先生って来る?
……例えば女の先生とか」
そうだって言って。実は昨日会ったって答えてほしい。
そうしたら俺はお預けされても我慢できる。しばらくの間、別々なのも耐えてみせるから。
目の前の黒髪が揺れて甘い匂いが漂う。
けれど返ってきた答えは全く甘くはない。
「いや、その予定は無いけど。急にどうした?」
「………なんでもねぇ」
じゃあ、あの女は一体誰なんだよ。
なんで一緒にいたんだよ。なんであんな女に笑いかけてたんだよ。
聞きたいことを飲み込む俺をリカちゃんは置いていってしまう。
「変な慧君。おやすみ」
ガチャンという音と共に閉まった扉。もしかしたら気が変わるんじゃないかと思って少し待って、諦めて内鍵を締める。
『しばらく別々』
最悪なタイミングでのその言葉。
俺の中にあった不安の芽がどんどん育ち、見たくなかったモノを見て蕾をつけた。
そしてそれは、リカちゃんに言われた言葉によって花開き俺を追い詰めていく。
もう周りも見えないほどにリカちゃんに落ちた俺は後戻りなんて出来ない。
リカちゃん以外いらない。リカちゃんといたい。
あの女が誰だろうと絶対に渡さない。
その気持ちだけが俺の心を占めていた。
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