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久しぶりの顔ぶれに騒ぎ立つ教室内。明日になれば普段通りに戻るくせに今はみんな楽しそうに笑っている……俺以外は。
「なぁ慧ぃ。俺まだ数学の課題終わってないんだけどどうしよ」
俺の背中をツンツンしながら情けない声を出すのは後ろの拓海。やめろと怒れば頬を膨らませて拗ねる。
「なんで初日から不機嫌なんだよ。今日はHRだけで帰れるだろ」
「別に不機嫌じゃねぇよ。ただ暑いだけ」
「クーラー効いてんのに?」
俺の後ろの席で課題見せてと周りに頼み込む拓海と、話し声でうるさい教室内に俺のイライラは増す。
ガラっと開いた前の扉。騒がしい声が聞こえなくなって、その代わりに漏れるヒソヒソ声。
「なんで金髪?」
「似合って…る、けど急になんで?」
みんなの視線を一身に受けたソイツは自分の席に鞄を置き、こちらを見た。
その目が訴えるのは「今すぐサボりたい」だ。
けれどこれから始まるのはHRで担当はもちろん担任の獅子原先生。よって俺がサボるわけない。
首を振って答えれば歩はため息をついて机に突っ伏す。
こうなるのなんてわかってんだから元に戻せば良かったのに。
きっと面倒臭がりの歩だから放置してたんだろう。
ただでさえ素行の悪さで目を付けられてるのに、金髪にしてきた歩をリカちゃん以外の教師はどう思うだろうか。
少しだけ心配になった。
「おはよう」
教卓に手を突いたリカちゃんが教室内を見渡しながら笑う。
今までは俺が先に聞いてた朝の挨拶。それを他のヤツらと一緒に聞くのは嫌だ。
目が合うのが何だか悔しいから視線を窓の外に向ける。
俺の心のドロドロとは真逆の真っ青な空が眩しくて更に気分は落ち込んだ。
「やっぱり1ヵ月じゃあんまり変わらないな……そこの1人を除いてだけど」
リカちゃんの視線が歩に向き、それに気付いた歩がチッと舌打ちを零す。
大半の教師はそれに怒るけれどリカちゃんは笑ったまま続ける。
「それ彼女の趣味?」
「うっせぇ。お前に関係ないだろ」
「さすが金髪にするだけあるわ。初日から噛みつくなよ闘牛君……じゃなかった牛島君」
険しくなる歩の表情に反して楽しそうなリカちゃん。
ゆっくり歩の元まで歩いて行ったリカちゃんが、金色に染まった髪を一房掴み「おぉ」と呟いた。
「やっば。見事なまでに金色」
「当たり前だろ。これが黒に見えんなら先生の目ヤバいんじゃないですかー?」
「お前みたいな生意気なヤツには合ってるのかもな。精々今のうちに楽しめよ」
ほら。リカちゃんはやっぱり怒らない。それは俺にだけじゃなく他のヤツにも平等。
歩の髪を指に巻き付けて満足したリカちゃんが教壇へ戻る。
俺も歩みたいに金髪にしたら、みんなの前でも触ってもらえるのかな。
そんなことを考えてるなんて悟られないように、また視線を窓へと向けた。
やっぱり空は澄み渡る青色だった。
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