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HRが終わって課題を提出すれば2学期初日は帰るだけだ。
なんとか数学も終わらせたらしい拓海が安堵のため息をこぼしながら、いそいそと帰り支度をしていた。
「なぁ。今日俺バイト無いんだけど、どっか寄ってく?」
歩の言葉に俺は考える間もなく頷いた。どうせリカちゃんが帰ってくるのは夜。これから何時間も後だから家に1人でいても退屈してるだけ。それなら誰かといた方が気持ちも落ち着くだろう。
「んじゃ駅前で飯食っていこう。拓海は何食いたい?」
「なんで俺には聞かねぇんだよ」
「お前はどうせラーメンだろ?言っとくけど今日は絶対嫌だからな」
いつもと同じ歩との掛け合い。後ろの席の拓海に話しかければ苦笑いを浮かべながら鞄を肩にかけた。
「悪いけど俺用事があって。っつーか、これからしばらくは遊びに行けないかも」
「は?お前が遊びに行くの断るってどうした?」
「俺にだって色々あんの!時間無いからもう行くわ!!」
慌ただしく教室を出て行く小さな身体。誰よりも遊びに行くのが好きで、歩のバイトが無い日はソワソワしてたくせに。
そんな拓海がまさか断るなんて…驚く俺の腕を歩が掴み歩き出す。
「ちょっ、なに?!」
「追いかけるぞ」
「なんで?」
「お前、美馬さんの言ってたこと忘れたのか?あんなに急いで帰るってよっぽどの用事だろ。
それを俺たちに言いたくないってことは例の彼女の可能性が高い」
歩と2人、駆け足で拓海を追いかける。階段の踊り場にある窓から校門の近くを歩く拓海を見つけた。
「歩、拓海いたぞ!」
「アイツ無駄に走るのだけは早ぇからな…。見失う前に急ぐか」
バタバタと階段を駆け下り、ようやく1階までたどり着けば後ろから名前を呼ぶ大きな声が響いた。
呼ばれるのはもちろん俺じゃなく歩の名前だ。
「牛島ー!!!」
「うわ……最悪」
怒鳴られた返しが「最悪」ってのはどうかと思う。それを聞いた大声の主が険しい顔をより激しくさせる。
「最悪はこっちの台詞だ!お前その頭はどうした!!」
「どうしたって…気付いたらこうなってました」
「そんなわけあるか!」
「無いってなんで言い切れるんですか?教頭先生」
この学校の近づいちゃいけないモノの1つ。
口うるさくて声がデカくて唾を飛ばしてくる教頭。
コイツに捕まったら簡単には離してくれない。
「お前みたいな素行の悪いヤツの言うことを信じるバカがどこにいる?!」
「素行と髪の色は関係ないと思うんすけど」
「今すぐ戻して来い!」
「嫌ですよ。別に校則で禁止されてるわけじゃないんだし」
素直に頷いときゃいいのに、言い返す歩。上からものを言われるのが大嫌いな性格が仇となる。
元から教頭が歩のことをよく思ってないのは有名な話。
教頭は言うことを聞かないヤツ、不真面目なヤツが嫌いだから。
…と、いうことはだ。
「ちょっとマシになったかと思えばすぐこれだ。本当にお前らはどうしようもないクズだな」
ほらな。
その言葉は今度は俺に向かって発せられる。
グチグチと長い説教モードに入りそうな予感。このままじゃ拓海を見失ってしまう。
どうすると目配せしあう俺たちは、こうなりゃ強行突破しかないと視線で会話し、それを実行しようと後ろに後ずさった。
それを止めるように軽快な音楽が鳴る。
今時まだあったのかと思う着メロ。
持ち主が堂々とポケットから出したのは時代錯誤が甚だしいガラケーだ。
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