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どっと疲れた身体をソファーに沈める。
結局、あの後は俺も歩も拓海に声をかけることは出来なくてそのまま帰って来てしまった。
どうして言ってくれないんだって気持ちが半分。言われてどう答えたらいいか戸惑う気持ちが半分。それは歩も同じようで、とりあえず今日は帰ろうってことになった。
明日から拓海にどんな風に接すればいいんだろう。
普通に、とは思っていてもふとした時によぎるのは拓海が赤ちゃんを抱いてる姿。
想像でしかないソレに何とも言えない気持ちになる。
「腹減ったな…」
コンビニに買いに行くのも面倒でキッチンを漁る。棚の奥から忘れ去られていたカップ麺が出てきた。
リカちゃんと一緒に飯を食うようになって久しぶりのカップ麺。奥の奥で眠っていたソレを手に取りパッケージを開ける。
久しぶりの感覚に少しだけ気分が上がった。
沸かしたお湯を注いで数分待って1口啜る。
「なんか違う」
いつもと全然違う。
大好きだったはずなのに。久しぶりでテンションが上がってたはずなのに。
たった1口食べただけで、もういらないと思った。
こんなことなら歩と夕飯食って来ればよかった。
リカちゃんが一体いつ帰ってくるのか、そもそも俺の家に寄るのかもわからない。
しばらく一緒に寝ないなら家に来る必要なんてないはずだ。
「今日の礼、言っとくべきだよな…あのふざけたLINEのことも言わねぇと」
とってつけた理由が思いつき、俺は家を出た。数歩で目的地に着く。あまり使うことのない鍵を差し込み回す。
開いた扉。玄関に入るとすぐに感じる甘い匂い。
ホコリ1つ落ちてない廊下を進みリビングに入る。やっぱり綺麗に片付いている部屋。
脱ぎ散らかした服も、食べかけのお菓子もない。
「どこまでも完璧なヤツ」
まるでモデルルームのように隙のない部屋は持ち主そのものだ。生活感があるのに無い…って変だけど、まさにそれ。
リビングを抜けて寝室へ入ればバニラの匂いがより一層強くなった。
少しだけ皺のよったシーツに触れて身体を横たえる。
シーツだけじゃなく枕からもリカちゃんの匂いがして本当に苦しい。
好きだから、好き過ぎてもうどうしようもなくて。恋人なのに両想いなのに苦しいのは、どうしてだろう。
壁にかけてあるスーツ。昨日リカちゃんが着てたモノ。
そっと近寄って羽織ってみるとサイズが大きすぎて笑ってしまった。
「腕長っ…あいつどんだけスタイルいいんだよ」
オーダーメイドのソレは肌触りも良くてリカちゃんの身体に合わせてあって、すげぇ細い。
さりげなくポケットの裏地だけ色が違うのもリカちゃんらしい。
裏地まで質感が良くて思わずあちこち触ってしまう。
いろいろと触っているうちに、内側にある胸ポケットから何かがポトリと床に落ちた。
薄いピンク。柄は花柄。
うちの学校は男子校。教師もほとんど男で、俺たちの学年に女の教師は1人もいない。
心臓が飛び出しそうなほど激しく音を立て始める。
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