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のんびりと時間をかけて登校する。教室に入ってまず目にしたのは机に突っ伏して眠る金髪。
遠巻きに見られてるのなんて気にもしない図太い神経がすげぇと思った。
俺の後ろの席の拓海は周りのヤツらとバカみたいに笑っている。
人付き合いが苦手な俺や歩と違って拓海は友達が多い。
俺たち2人の知らないヤツとも仲良いし、初めて話すヤツともすぐに打ち解ける。俺と歩がクラスではみ出さないのも拓海のお陰だと思う。
でも今はそんな拓海の知らなかった一面に複雑な気持ちがあったりする。
俺が来たことに気付いた拓海が話すのをやめてこちらを向いた。
「慧お前遅すぎだろ!あと少しでリカちゃん先生来るぞ」
「間に合ったんだからいいだろ」
「でもリカちゃん先生って慧には甘いもんなぁ。あんな鬼でも人間なんだな」
「言ってる意味わかんねぇよ。ってかお前それ本人に聞かれてても助けねぇからな」
ハッと教室の扉を見る拓海。まだ開く気配のないソレに安心したようにため息をつく。
今までと変わらない、バカでうるさい拓海が本当に父親になるなんて信じられない。
「なぁ。お前さ、俺と歩に何か隠し事してない?」
丸い目をパチパチさせた拓海は少し考えた後「あぁ!」と思いついたようだ。
まさかこんなタイミングで言われるのか?!
ドキドキしながらその瞬間を待つ。
「実はさぁテストに向けて今から勉強してんだよ。
昨日はとりあえず部屋の掃除して出てきたマンガ読んでた。今の俺なら虎にも勝てるぜ!」
「…………お前に期待した俺がバカだった」
興味ないことを言われ、しかもその内容はくだらない。
テスト前に勉強しようとして掃除を始めるのは拓海の癖だ。どうせまだ時間があるからとか言ってギリギリまで勉強しなくて泣くってオチが見えてる。
「はぁ?!2人に内緒にしてて俺がどんだけ心苦しかったと思ってんの?!」
「知るかよ。テスト勉強なら俺だって毎日やらされてるわ」
「なんで勉強しようと思ったら掃除したくなるんだろ?」
「ならねぇよ。日頃から綺麗にしとけよバカ」
後ろで文句を言う拓海を無視して前を向く。
チャイムが鳴ってリカちゃんがやって来た。
教室に入って来るなり、寝ている金色の頭を出席簿で叩きニコニコと笑う兄貴と叩かれて睨みつける弟。
俺の後ろで昨日観たバラエティについて熱く語り、例の如くドS教師に氷の視線で睨まれるバカな鳥。
色々悩んで考えてしてる自分が本当にバカみたい。
悩みのうちの1つは教卓の前に立つ黒い男、もう1つは人が変わったみたいに静かになった後ろのチビ。
そして最後に叩かれた頭をまだ摩っている金髪。
みんな個性が強すぎるのがダメなんだと思う。
桃ちゃんも個性の塊みたいだし……
なんだか美馬さんに会いたいと思った。
大きくて怖いけど癒し系いや、癒されはしねぇな。
なんでこう俺の周りには変なヤツが集まるんだろう。
こんなにも俺は普通なのに。
その中でも1番変なヤツ。
爽やかに笑いながら喋ってる担任の先生を睨みつける。
目が合ったリカちゃんは、視線をそらしてまた俺を見て爽やか…じゃなくニヤリと笑う。
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