アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
525
-
「別に内緒にしてたわけじゃねぇんだけど…なんか言いづらくて」
3人で渡り廊下の壁に背を預け、並んで座る。俺、拓海、歩の順番…いつもの位置が少しだけ懐かしい。
「タイミングが無かったって言うか、なんて言っていいかわかんなくて…」
人差し指同士をモジモジさせて本当に言い辛そうだ。
拓海のタイミングを待とうと思った俺と真逆の男がイライラした声を上げる。
「言い訳はいいから早く言えよ。このままじゃ次もサボらなきゃなんねぇだろ」
前まで率先してサボってたくせに、歩のその変わり様に驚いた。
「別に1時間サボんのも2時間サボんのも変わらねぇだろ。拓海の言いたいように言わせてやれよ」
「は?お前それ次の授業が何かわかってて言ってんの?」
次…次の2時間目は……と考える俺に歩が答えをくれる。
「次は英語だろ。俺と拓海は課題やらされるか説教で済むけどお前は知らねぇからな」
「拓海。早く言え」
「今さっき俺の言いたいように言わせてやれって言ってたじゃん!!」
「ダメだ。今すぐ言え」
ムッと唇を尖らせながらもポツポツ話し出す拓海。言葉を選ぶっていうよりは、拓海自身も整理しながら話している感じだ。
「俺も最近ってか夏休みの終わりに聞いたばっかで…よくわかってなくて。でも間違いないみたいだから…その」
チラッと俺を見て次に歩を見る。そして俯いた顔は少し赤い。
「………赤ちゃん、できたんだ」
わかっていたけど本人から直接聞くとその衝撃は更に強くなる。最後の一撃をくらったみたいな感覚。
「俺もまさかとは思ったんだけど…」
「病院は?」
「行った。もうすぐ3か月だって言われた」
わーっと恥ずかしそうに顔を覆い、伸ばしていた足をバタバタさせる。生じき、俺と歩はそれどころじゃない。
そんなのは全く関係なく、やっと言えた安心感からか拓海は今まで内緒にしてたのを補うようにどんどん話出す。
「まだ全然形なんてわかんなくて、でもちゃんと生きてんだよ。それがあと半年ちょっとで赤ちゃんになるんだから、すげぇよな…。早く男の子か女の子かわかんねぇかなって思ってんだけど」
「おう…」
黙ったままの歩の代わりに応えたのは俺だ。歩は口元を押さえて明後日の方向を向いていた。
「でもさ!俺、男の子でも女の子でも可愛がるよ!!いっぱい遊んで色んな所連れていってやるんだ!!」
ニコニコ笑って、アレをしてやりたい、ココに連れて行ってやりたいと語る。その顔は本当に嬉しそうで見ている俺も嬉しくなってきた。
ほら。少しは複雑だけど、やっぱり嬉しい。秘密にされてたことを差し引いても嬉しいって思う気持ちは変わらない。
「上手く説得できるといいな。彼女と揉めてんだろ?」
「揉めてるっつーか、なんかケンカしたみたいで投げやりになってんだよ。どうせすぐに元に戻るから大丈夫」
「でも拓海がしっかりしないと彼女も不安だろ。お前が支えてやれよ」
「俺が?頑張るけどー…でも支えるっていうより愚痴聞くだけだよー」
たとえ愚痴だとしても話を聞いてやるのが恋人だと思う。多分リカちゃんなら黙って聞いてくれる。
「それで楽になるんならイイじゃん」
「ケンカしたって言うくせに次の日にはラブラブしてるからな。俺は何なのって思う」
ヘラヘラ笑う拓海につられて俺も頬が緩む。
2人で微笑みあっていると今まで黙っていた歩がやっと口を開いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
525 / 1234