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恒兄ちゃんと電話を切った後は特にすることもなくて、お菓子を食べながらTVを見て過ごした。
あんまりお腹も空いてないし夕飯を用意すんのも面倒でダラダラして。
時間なんて気にならない。
ってのは嘘で本当は気にしたくないだけ。
自分に嘘をつきながら過ごしても、目は正直に時計を見てしまう。
9時が近づくのが怖い。リカちゃんがここにいないのが不安で。もしかしたら今日が約束の日なんじゃないかって疑ってる俺がいる。
時計の短針が8を過ぎ9に近づいていく。あと15分…まだリカちゃんは現れない。
俺の家じゃなく、自分の家に帰ったのかもしれないけど確かめる勇気はない。
でも……俺は素直じゃないくせに束縛しちゃう。
9時まで残り10分を切ったところでスマホを手に取る。
また前と同じ。履歴の中から名前を探し電話をかけた。
こんな事して何になるんだって思いながらコール音を聞く。
「早く出ろよっ…!!」
また切れるかと思った。今日こそ出ないと思った。
『どうした?』
やっと出たリカちゃんの声。
『悪い。音消してるから気付くの遅れた』
「リカちゃんどこにいんの?」
『仕事終わって帰るとこだけど。何かあったか?』
「本当に仕事?」
『そんな嘘ついてどうすんだよ』
それが本当かどうかなんてわからない。だから俺はダメだってわかってるのにリカちゃんを試す。
全て自分が安心したい為に。
「俺、夕飯何も食ってなくて寝てて…お腹空いた」
普通ならそんなの知るかって言われるようなセリフ。けど俺のリカちゃんは絶対にそんなこと言わない。
『何食いたい?つっても時間が時間だし、たいしたの作れないけど…』
こんな時間まで残業してたのにリカちゃんは俺の為に何か作ってくれるつもりらしい。
それを聞けて俺の中の不安な気持ちは小さくなる。
「なんでもいい。近くのスーパー寄る?」
『そうだな。適当に何か買って簡単なの作ってやるよ』
「別に弁当でいいのに」
『駄目。ちゃんと栄養とってもらわないと俺が困る』
ほら。リカちゃんは今日も俺のことを思ってくれてる。
それをこうやって確かめる俺は卑怯だ。俺の中にこんな部分が隠れていたんだって思うと怖くなる。
「じゃあスーパーで集合な!」
沈みきっていたソファから身体を起こし俺は立ち上がった。
『は?俺が買って帰るからお前はおとなしく家で…「やだ!」……だよな』
まだ9時だし外には街灯もある。それにスーパーはここから歩いて数分だ。それを知っているリカちゃんは呆れたような声を上げながらも「気を付けろよ」と許してくれた。
やっぱりリカちゃんは俺を思ってくれてる。
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