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リカちゃんの作ってくれたチャーハンを食べながらチラッと視線を横に送る。
リビングに置かれたソファに座りながらパソコンに向き合う真剣な顔。コンタクトを外して眼鏡をかけているからか、仕事ができそうな雰囲気が溢れている。
ってかリカちゃんって仕事できる…らしいけど。
教師歴5年目にして生徒会の顧問と学年の副主任も務めてるんだから有能なんだろう。
…ん?なんか変。今年27歳なんだったら今は6年目じゃないか?22歳で卒業して就職してって数えたらそのはず。
どう計算しても、そこには1年の誤差がある。
「なぁ。リカちゃんって大学浪人した?」
持っていたスプーンを置いて話しかけた。こちらを見ずに手元を動かしたまま答える。
「いや。ストレート入学で留年なしの4年で卒業」
「へぇ…」
「入学して半年で交換留学して、3年からはこっちの大学通って教員免許取って卒業。でもって卒業してからまた1年間、向こう飛んで採用試験受けて受かったから帰って来た」
仕事しながらだからか聞きたかったことが一気に返ってくる。その内容は俺には理解できそうにないことばかり。
わかるのは、リカちゃんがすごいってことぐらいだ。
「留学ってどこの国?」
「最初はアメリカ。卒業してからはイギリスとか色々な。どこも英語圏だけど全然違っていい刺激になったよ」
やっぱりパソコンに向かったままで、なんとなくそれが嫌で俺は皿をもって歩み寄る。
リカちゃんの隣に座ればキーボードを打つ手を止めたリカちゃんがやっと俺を見た。
「慧、食い終わってからにしろよ」
「1人で食っても退屈だし。別に零さないし俺の家だからいいだろ」
「そういう問題じゃなくて…って見るなバカ」
画面には表みたいなのが映っていていて、そのタイトルには『修学旅行』と書かれていた。
来月末にある修学旅行に関係する何かを作っていたらしい。
「いいじゃん。別にテストじゃないんだし。
あ、2日目って殆ど自由時間なのか…俺なんか甘いの食べたいんだよなぁ」
来月末に俺たちは修学旅行でオーストラリアに行く。俺も拓海も初めての海外で、今からどこに行くかってよく話していた。歩は興味無さそうにしてたけど本当は楽しみに違いない。
「甘いモノだったら美味いジェラートがある。こっちが10月の末ってことは向こうは春先だから開いてると思うぞ」
「リカちゃん行ったことあんの?」
下見は別の英語の担当が行ってたから、もしリカちゃんが行ったことがあるならいつの話だろう。
「昔にな。とは言っても滞在してたのはパースって街なんだけど」
地図を開いて、ここと指さす。そこは俺たちが行く街とは正反対にある場所。
「有名なチョコレートの店があるんだよ。お前そこの食ったら感動するんじゃないかな」
「俺たちが行く場所には?」
「あそこはー…どうかな。あんまり観光しなかったから」
「じゃあ何してたんだよ」
リカちゃんが眼鏡をかけ直した。その手で口元が隠れて、どんな表情をしているのかはわからない。
「別に。ただフラフラしてただけ」
「お前が何の目的も無く行ったりすんの?」
「そういう気分だったんだって。だから知りたいならガイドブックでも読めよ」
俺の部屋には、既に買ってきたガイドブックがある。行きたい所の目星も付けてる。
でも俺はリカちゃんが行ったことのある所へ行きたいと思った。
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