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「リカちゃんって2日目何してんの?」
さり気なく聞いてみる。
「きっと見回りだろうな。まともに英語話せるのって俺含めて3人しかいないし。何か問題があった時すぐ駆けつけなきゃなんねぇからなぁ…」
すごい速さでキーボードを打ちながらリカちゃんは淡々と答える。普段あんまりパソコンを使わない俺からしたら、なんでそんなに指が動くのかわからない。
残っていたチャーハンを掻きこみ、皿とスプーンをテーブルに置く。リカちゃんの方を向いて俺は話しかけた。
「なぁ。2日目さ、そのパース?ってとこ行ってチョコ食べたい。連れて行けよ」
見回りなら多少は自由がきくはず。サッと行って帰ってくれば大丈夫なはずだ。
「慧君ってば俺とデートしたいんだ?デートのお誘いにしては生意気だけど素直に言えたことは褒めてやる」
「じゃあ、」
「でも無理」
視線だけ動かしたリカちゃんが俺を見る。そしてそれはすぐにパソコン画面に戻ってしまった。
「パースまでは飛行機で5時間。往復10時間はいくら自由でも無理だな」
「…っ、それなら違うところでいいからどこか」
「慧」
今度はちゃんと俺を見たリカちゃん。少しズレていた眼鏡をかけ直して真っすぐ見つめてくる。
「学校では俺とお前は教師と生徒。2人で観光なんてしてたら変に決まってんだろ」
「別に偶然だって言えばいいじゃん」
「駄目。俺が1人でならともかく、基本は何人かで行動してるから。抜け出してってのは無理だろうな」
たとえそうだとしても、きっとリカちゃんならできると思った。
っていうか前までのリカちゃんなら相手が誰だろうと、どんな状況だろうと上手く言いくるめていたと思う。
今のリカちゃんは、できないんじゃなく本当はできるけどしないのを選んだ。
俺のためなら何でもしてくれるリカちゃんが…あのリカちゃんが『しない』って言う。
……なんでだよクソ野郎。
リカちゃんの唇が動くのを感じながら俺は自分の怒りをぶつける。
「でも、」
「なんだよ…ちょっと冗談言っただけだろ。マジにしちゃってバカみてぇ」
自分から誘って断られた。その恥ずかしさから逃れるために皿を持って立ち上がる。
「慧」
「だいたいお前、最近俺のこと放置し過ぎじゃね?そんなんじゃ俺が他のヤツと浮気しても知らないからな」
キッチンへ向かう為に踏み出した。その次の一歩は地面に触れることなく、その代わりに見えてた景色がガラリと変わる。
今の俺に見えてるのはレンズ越しの長い睫毛とその奥にある黒い瞳。
俺を見つめているソレがだんだんと細まって鋭くなる。
「お前さ、誰に向かってそんな口利いてんの?」
声を荒らげることなく落ち着いたまま薄く笑ったリカちゃん。
「せっかく優しくしてやってたのに…多少なら可愛くても度を越したワガママは駄目だな」
左右対称に上がった唇。
こうやって笑うのはリカちゃんのスイッチが入った証拠だ。
「今すぐ謝るなら許してやってもいい」
「っ、なんで俺が…」
綺麗な弧を描く眉がピクンと動いた。
「へぇ……そう。そういう態度とるんだ」
大きな手が俺に向かって伸びてくる。
それを見つめながら俺は自分は悪くない。リカちゃんの方が悪いって心の中で文句を言う。
もしかしたら気付かないうちに口に出していたかもしれない。
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