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534 (R18)
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「リカちゃんっ…」
「なに?」
俺の胸元に埋められた顔。視線だけをこちらに向け、かけてくる声は固い。
脱がされるわけじゃなく捲り上げられただけのタンクトップ。リカちゃんの眼鏡もかかったままだ。
「痛い…ん、だけど」
「だろうな。血が滲んでるから」
さっき噛まれたときに切れてしまったらしい。どんだけ強く噛みやがったんだよと睨めば噛んだ張本人はレンズの奥でニヤッと笑う。
嫌な予感しかしないその笑み。見せつけるようにして、また歯を立てる。
「やっやめ…んっアァ!!」
傷ついた箇所に犬歯を宛がったリカちゃんが力を込めていく。そこまで激しい痛みじゃないのに、ゆっくり焦らされながらされると痛みは倍増して感じるように思えた。
「優しくシないって言っただろ。黙って俺の言う事聞いてればこれ以上は痛くしないから」
なんでこんなに怒ってるんだろう。浮気するなんて本心じゃないってわかってるって言ってたのに…。
血の滲むところに舌が当たるたびジンジンなのかヒリヒリなのか、熱くて痺れる痛みが襲う。けど何回も繰り返されれば痛みは薄くなり、それがもどかしくなる。
切れた肌を吸ってほしい。痛さの裏にある快感がほしい。
「あっ、やだ…ソコじゃなくて」
噛んだ方とは反対の乳首を弄るリカちゃんにねだる。
いつもなら意地悪く笑って、からかった後にたくさんシてくれるはずなんだけど…。
「リカちゃんっ!ソコじゃないっ…」
今日は全然応えてくれない。それどころか目さえ合わせてくれない。
ただ黙って胸への愛撫だけを続ける。
身体は気持ちよくても心は寂しい。
快感を与え続けられる身体と存在を無視される心が真逆に向かっていく。
何かに怒ってるなら、黙っていた方がいいのかもしれない。気持ちイイことだけを考えてリカちゃんに抱かれようと俺は目を閉じた。そうすればいつもの体温と匂いと、何度も与えられてきたリカちゃんの愛し方を感じることができるから。
触れていた手と舌が止まる。
リカちゃんが俺の胸から顔を離し、前髪をかき上げた。形の綺麗な眉はやっぱり寄っていて、まだ機嫌が悪いことを表している。
「なぁ。痛くても耐えて、言いたいことがあるのに黙って。お前そんなヤツだっけ?」
瞳は冷たいまま薄い唇だけを三日月の形に歪め笑って問いかける。意地悪…なんてレベルじゃない。
感情を失ったんじゃないかって思うぐらいに、その表情からは何も読み取れない。
何のタイミングで何が原因なのかわからず、どうしたら元のリカちゃんに戻るかもわからない。
ここで謝って悩んでることを素直に言えばいいのかもしれない…けど。
リカちゃんを信じてる。別に気にしてない。何か理由があるんだ。
そう言い聞かせてきた。考えないようにしてきた。けれど実際は試して、確認して安心して。
離れたくない。泣いて縋るなんてダサいことしたくない。
『好き』と意地と不安が溢れる俺の瞳が揺れる。
ソレを隠すように伸びてきたリカちゃんの大きな手が覆う。
「あの手紙見たんだろ?」
「なんで知って…」
「あんなにグシャグシャになってたら誰でも気付く。
なんで俺に聞かない?今までのお前だったら怒鳴って俺に突っかかってくるだろ」
「それは、」
覆われたままの視界。真っ暗なソコから聞こえる声と近づいてくる甘い匂い。
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