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「本気で疑ってんの?」
そんなことない…俺はリカちゃんを信じてる。何かの間違いだって思ってるし、リカちゃんが俺を大切にしてくれてるのはわかってる。
でも本当にそうなのか?それならなんで言いたいことが言えないんだろう。
黙ったままの俺に痺れを切らしたリカちゃんが舌打ちをした。リカちゃんが俺に向かってするのは珍しい。
「…………答えらんねぇってことは肯定かよ」
纏う空気が更に冷たくなっていく。
「お前は今まで俺の何を見てきた?俺が言ってきたことも、してきたことも無駄だった?」
落ち着いた声で発せられる責めるような言葉。
限界だったモノが爆発に向かっていくのがわかった。
「俺がそんなのするかどうか考えたらわかるだろ。本当、お前はとことんバカなんだから」
火の点いた導火線が一気に燃え上がり、弾けた。
「全部てめぇの所為だろうがよ!忙しい忙しいって言って俺を放っておいて!
仕事だからって我慢してたら知らない女と歩いてやがるし!それに!!あんなモン見せられて浮気疑うなって方が無理だろ?!」
口にしてしまえば残りは簡単に出てくる。ここ数日言えずにいたのが嘘みたいだ。
「そんだけ怪しいことしといて信じろってよく言えるよな!信じてほしけりゃ、そういう事すんなよバッカじゃねぇの!!」
叫ぶように言って向かい合う男を睨みつける。頭の中では、こんな状況でキレたら逆効果だってわかっていても我慢できなかった。
なんで俺ばっかり責められんだよって。
悪いのはお前じゃねぇかよって気持ちが抑えきれなかった。
「なに逆ギレしてんの?」
「逆ギレじゃねぇし!なんで俺が責められてんのかわかんねぇ!」
「それはお前が黙ったままいるからだろ。普段はキャンキャン騒ぐくせに、こういう時だけビビって逃げるの悪い癖だぞ」
「お前が言わせねぇからだろうが!!俺だって言えるなら言いたいことがすげぇあるんだよ!!」
こうなれば最後まで戦ってやる。リカちゃんの雰囲気に飲まれて従いかけたけど、本当の俺は嫌なことは嫌だって言うし気に入らないことには反抗する。
それは相手がリカちゃんだからって変わらない。
「言いたいことがあるんなら言えば?」
俺を見下しながら威圧的な態度で向かってくるなら
「あぁ。言ってやるよ!」
俺だって負けない。俺は悪くないんだ。
リカちゃんが女と一緒に歩いてるのを見たこと、そのタイミングで別々の時間が増えたこと。
ポケットから見つけた手紙。
今時わざとらしく紙で渡すなんて性格悪い。
そんな女に引っかかるなんてバカじゃねぇの。
リカちゃんを責めて感情のまま汚い言葉も出たと思う。
一通り言いたいことを言いたいまま伝える。
黙って聞いていたリカちゃんが俺を見た。
真っ黒の瞳。見つめられると怖くも嬉しくも、切なくも幸せにもなれる瞳。
今度はどんな冷たい色をするんだろうって覚悟しながら見つめ返す。
「言いたいことはそれだけ?」
「あぁ。お前も言いたいことあんなら言えよ」
「言いたいこと、ねぇ」
中指で眼鏡をクイッと上げて、その手は俺の頬にまで伸びてくる。頬に手を宛がったまま顔を近づけたリカちゃんが言う。
それは俺の予想を超えた言葉でリカちゃんらしい言葉だった。
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