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「はぁ…」
「あー」
見事にハモった俺と拓海の視線が合わさる。
「お前ら揃って鬱陶しい」
「いいよな歩は。なんだかんだ言って器用な男だよお前」
ちょっとカッコつけて言った拓海の頭に落ちる参考書。無言でソレを振り下ろした歩がチッと舌打ちをした後にタバコを取り出した。
目立つようになって注意しろって散々言われてるのに変わらないヤツだ。
「なんだよ2人して辛気臭い顔して」
「え??臭い?」
「拓海、匂いのことじゃないから。表情のことだから」
「顔が臭いのか?食べたの普通のおにぎりなんだけど!」
クンクンと自分と俺の匂いを嗅ぐ拓海は本当にバカだ。
「慧はリカちゃん先生と同じ匂いだから臭いなら俺だろ?なぁ、俺マジで臭い?」
「お前……もういい。真面目に言った俺がバカだった」
細い煙を吐き出しながら歩が持っていた参考書を開く。今度のテストの為に歩は休み時間も勉強してる。一度決めたら絶対に貫く性格にしても意志が強い。
「慧から言ってよ」
「は?」
「なんか悩んでるんだろ?」
自分だって何かに悩んでるくせに俺から言わせようとするのは拓海の優しさなのか、ただ言い辛いのかはわからない…けど。
俺を見つめる拓海の視線。気の無いフリをしながらもページを捲ろうとしない歩。ゆっくりと口を開く。
「今度の懇談にさ、父さんが来るんだよ。今まで全く興味なか…」
言っていて違うなと思った。前にリカちゃんが教えてくれたように、父さんは興味がないんじゃなくて言い出せない人らしいから。
「じゃなくて、まぁなんていうか…いきなり来るって言いだして」
拓海も歩も俺の父さんを知らない。姿を見せることのない父さんの話をしてもきっと伝わらないだろう。
それなのに歩が頷いた。
「あぁ。お前に似てるって親父さんか」
「え?」
「兄貴から聞いたことある。お前ら親子似すぎてて驚いたって。まぁ俺からしたら兄貴と父さんの方が似てると思うけどな」
リカちゃんと歩のお父さん…ってどんな人だろう。なんとなくだけど俺様のような気もするような、しないような。歩のお母さんには何回か会ったことがあるけれど、明るくて優しい人だった。
それは拓海のお母さんも同じ。
俺の理想の母親って感じで、自分には縁のないモノだ。
「おじさんが来てくれるならいいじゃん!進路の話だし大事なんだから何悩んでんの?」
相変わらず能天気な拓海。うちの父さんはお前のとは違うのに…。
また父さんと会わなきゃならないと思うとどんどん気分は落ちていく。
「大丈夫だって。上手くいってるはずだから」
「なにがだよ」
タバコの火を見つめながら歩が淡々と続ける。
「本当、お前が羨ましい。けどなりたいとは思わねぇ」
「また意味わかんねぇこと言う。今の俺はケンカ売られても買わねぇからな」
歩から目をそらしたと同じタイミングでポケットの中のスマホが震える。
俺に連絡してくるのは限られた人物。そのうち2人は一緒にいるってことは…この相手は多分アイツ。来たLINEに簡単に返事して俺は場所を移動した。
扉を開けたら1番に見える場所へ。誰よりも先にアイツの視界に映る為に。
そんなことなど知らない拓海が話し出す。
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