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「人に買い出しさせといてナニやってんだよ」
どうやら歩はリカちゃんに買い物をしてくるように言われていたらしい。その手に持った袋を持ち上げ、俺たちを睨みつける。
「言っとくけど俺はお前らと違ってマトモなんだからな。そんなもん見せられて喜ぶと思うな」
「本当は羨ましいくせに。お前も桃に乗ってもらえば?」
「思ってねぇよ!お前と一緒にすんな!」
歩をからかいながらリカちゃんが袋を受け取る。中から覗くのはカラフルなボトル。
それを持ってキッチンに消えれば歩の矛先は俺だけだ。
俺を睨みつけながら隣に座った歩と距離を取るように端に逃げる。
「時と場合を考えて盛れよ」
「別に今は問題ないだろ」
「俺に見られて問題ないって…やっぱりお前も変態だな」
また今日も始まる歩との言い合いに戻ってきたリカちゃんがため息を零す。
「お前らまで揉めてんじゃねぇよ。歩、これ以上面倒増やすな」
「なんで俺だけなんだよ」
「なんでって…じゃあ逆に聞くけど俺がウサギの味方しないと思う?どう考えてもお前よりウサギ優先だろ」
サラッと言ったリカちゃんに対して歩は無表情になり、それ以上何も言わなくなった。諦めたのかタバコに火を点けてスマホを取り出す。
庇ってくれたのか歩をからかいたかっただけなのか…リカちゃんの表情からはわからないけど、助かったことに変わりはない。
立ったままのリカちゃんを見上げる。目が合えば薄く笑って俺の髪をぐしゃぐしゃに掻き乱してきた。
「何すんだよ!」
「一応お仕置き。今日の主役はお前らじゃないんだからいい子にしてろよ」
そうだ。今日は気まずくなってる美馬さんと拓海の為の日だった。
今日のことをリカちゃんが言い出した時はちょっと驚いたっけ。
いつの間にかバレてた拓海の話。しかも俺たちが苦労して知った事をリカちゃんはなぜか知っていたのも不思議だ。
でも聞いてもきっと教えてくれないだろう。
「そろそろ来るかな。鳥飼は遅れるんだっけ?」
「1時間ぐらい遅くなるって言ってた」
「その間にアイツの気が変わらなきゃいいけど。もしそうなったら桃の出番だな」
また何か企んでいるのかリカちゃんはすごく楽しそうだ。片や黙っている歩は不機嫌。俺は間に挟まれてちょっと困るんだけど…。
本当にこれで大丈夫なのか不安だ。でもリカちゃんなら無理にでも思い通りにするし、歩も歩で拓海のこと心配してる。俺だって何ができるかわかんないけど助けてやりたいとは思う。
「リカちゃん」
「ん?」
「拓海と美馬さん、仲直りできるよな?」
リカちゃんが大丈夫って言えば大丈夫だろう。そう思って聞けば目を細め口端がどんどん上がっていく。これは…嫌な笑い方。
「仲直りどころか一線超えるかもな」
「一線?」
「そうなれば俺がキューピットか」
タイミング良くなったインターフォンに向かっていく背中。そこに生えてるのは天使の羽なんかじゃなく、間違いなく悪魔の羽。
さっき感じた不安が現実になりそうだと思ったのは俺だけじゃない。
隣で何か言いたげにしている歩も俺と同じ気持ちなんだろう。目が合った歩が小さく頷いた。
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