アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
561
-
遅れてくる拓海を待たずに俺たちは食べ始めた…んだけど。正直目の前に座る美馬さんを見れない。
だって頼まれたくせに上手く調べることもできず、リカちゃんにもバレた上に拓海と揉めたらしいし…その全部が俺と歩のせいじゃなくても責任を感じてしまうっていうか。
もう早く拓海来てくれよ!って心の中で願いながら必死に食べることに集中した。
「豊。顔が怖すぎてウサギちゃんと歩ちゃんが怯えてるわよ」
そんな俺たちの苦労をぶっ壊すのは桃ちゃん。のんびりとした口調で言うけど本当にやめてほしい。
チラッと見た美馬さんと目が合ってしまう。別に怒ってないしいつも通りの顔なのに怖い。
「ほらほらスマイル!」
桃ちゃんが美馬さんの両頬を摘まみ上げる。俺と歩は声にならない声でやめてくれと叫んだ。
これ以上美馬さんを刺激しないで!もう俺たちのことは空気だと思って!!
それなのに桃ちゃんはどんどんエスカレートしていって、鼻を突いたり眉間をグリグリしたりと止まらない。
あぁ…このまま怒鳴られて余計機嫌悪くするんだなって覚悟した。
「桃。鬱陶しい」
「それなら笑いなさいよ」
けれど美馬さんは怒るどころか桃ちゃんの手を払いのけただけ。拍子抜けした俺を見て頭まで下げてくる。
え……頭を下げた?誰が?って美馬さんが。
「ウサギ君に歩君。気を遣わせてしまってすまない」
「「え?」」
見事にハモった俺と歩に美馬さんが続ける。
「2人に迷惑かけたし、今日もこうやって協力してくれてるだろう。ありがとう」
なんか…ちょっと、というよりかなり意外。今までの美馬さんなら桃ちゃんを怒鳴って倍返し以上だったはず。それなのに声も荒げない。
元々礼儀正しい人だったけど今日はそれに丁寧さまでプラスされてる。
今回のことで美馬さんに何か変化あったのかな…さすがにここでは聞けなくて黙る俺の隣で、素直過ぎるヤツが動いた。
「美馬さんってなんで拓海のこと避けてんすか」
「歩!」
「え、だって気になるだろ。美馬さんってそういうことするタイプじゃないっぽいし」
「そうだけど…」
だとしてもこの雰囲気で聞けるわけねぇよ。普通の神経してたら絶対聞けない。
でも歩は普通の神経じゃなかった。図太いの上、極太だ。
「拓海が彼女妊娠させた最低野郎だからですか?でも、そうだとしても美馬さんが怒る理由ないっすよね」
ストレート過ぎる歩の言葉に場の空気が固まった。歩が美馬さんにこうやって強気に言うのは初めてだ。
「違う。それは俺の勘違いだってわかったから」
「じゃあなんで」
「それは……」
言い淀む美馬さんは本当に言い辛そう。真っすぐに突き刺さる歩の視線から顔をそらしてしまう。
リカちゃんも黙ったままだし、桃ちゃんはこの空気が嫌なのか立ち上がってトイレに行ってしまった。
もうやめろって見えないところで歩を突くけど全然聞いてくれない。
おとなしくしようと思ってたのは俺だけかよ!!心で叫んでリカちゃんに助けを求めたけど…。
「やっば。慧君と目が合っちゃった。楽しんでるかー?」
そしらぬ顔してタバコを吸っていたリカちゃんは、俺の視線に気付いてなぜか手を振ってくる。
兄にも弟にも伝わらない俺の気持ち。
最悪の状況に勢いよく立ち上がった俺を3人が見つめた。
これはもう意を決して言うしかない!!
「あのっ……「あれー?なんかケンカしてる?」」
トイレに行ったはずの桃ちゃんの隣に立つ人物。
今日も満開の笑顔で幸せそうなヤツ。
「ダメダメ!ご飯はみんなで仲良く楽しく食べなきゃ。作ってくれた人に失礼だろ!」
最高の登場をした拓海にこそ天使の羽が生えてるに違いない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
561 / 1234