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「すっげぇ!これ全部リカちゃん先生が作ったの?!」
テーブルの上の料理を見て拓海がはしゃぐ。空いてる席は歩の隣だけ。躊躇うことなくそこに座り、さっそく目の前の唐揚げにかぶりつく。
リカちゃんが小さく「共食い」とか呟いてたけど聞こえないフリしてよう。
「うまーい!!え、なになに?!みんな全然食べてないじゃん!」
この気まずい空気の中、なんで笑ってられるのか、なんで気にならないのか…拓海って本当に空気読めねぇ。ここまでいくともう才能だろ。
「あれ?豊さんだけジュース??」
そんなことなど関係なしの拓海は、1番触れてはいけないだろう美馬さんに声をかけた。避けられてるかもって悩んでたくせに、よく自分から声掛けれるよな…なんて思いながらそっとリカちゃんを見る。
リカちゃんにしては珍しくちょっと驚いたような顔。俺の視線に気付けば口パクで「けいくん」と呼ぶ。
もちろんそれに応えることはしない。
「あぁ。このバカが車で来たくせに酒なんて飲むから」
「だって仕方ないじゃない!リカが気を利かせてシャンパンなんて用意してくれてたんだもの」
「車で行くって言いだしたのはお前だろうが。無責任なやつ」
そう言う美馬さんの前には、歩が持ってきた袋に入ってたボトルが数本並んでいて…俺は気付いた。
リカちゃんは初めから美馬さんにお酒を飲ませる気なんてなかったんだ。でもって桃ちゃんが車で来たのも、すぐにシャンパンを開けたのもわざと。
いつもならビールなのに変だなって思ってたけど…やっぱり何か企んでいたらしい。
タバコを吸う男を見ればその口元を手で隠しながらも目はこれでもかってぐらい楽しそう。
まんまとリカちゃんの策に嵌っていく美馬さん…それに気付かないでいてほしい。
「俺も豊さんと同じの飲みたい!」
「じゃあグラスを…」
グラスを差し出した拓海の手と受け取ろうとした美馬さんの手が触れる。
拓海よりもだいぶ大きな美馬さんの手が震え、グラスが2人の間で落ちていく。
テーブルにぶつかる寸前でそれを受けとめるのは、俺が1番見慣れている白くて綺麗な手。
「あっぶねぇ…豊、ちゃんと受け取れよ」
「悪い」
「俺が手離すの早かったかも!リカちゃん先生ありがと」
今度はちゃんと美馬さんの元にいったグラスに注がれるオレンジジュース。それを飲んだ拓海は料理に集中しだし、桃ちゃんの話に美馬さんとリカちゃんが相槌うったりツッコミ入れたりして時間は過ぎる。
「おい慧」
俺がトイレに行って戻ろうとしたら廊下で待つのは歩だった。
「さっきの見たか?」
「さっきの…ってなに?」
「グラス渡す時に美馬さんがビクッてなったやつ」
「あぁ、なんか驚いてたよな」
そんなことよりグラスが割れるんじゃないか心配だったんだけど…歩は違うようで何か考え込んでいる。
「それがどうかしたのか?」
「いや、別に。そんなことあるわけないか」
それだけ言って先に部屋に戻っていく。
開けっ放しの扉の向こうでリカちゃんが俺を呼ぶ声がして、俺は急ぎ足で向かった。
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