アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
564
-
***
気を遣って話しかけてくれる拓海君にたいしたことも言えず、俺は自分がふがいない。
目に見えて避けたくせに謝れない。自分から話しかけることもできない。
少し離れて座る彼らを見た。
ウサギ君に歩君、そして拓海君。みんなまだ子供…なのに俺よりしっかりしてるじゃないか。
「はぁ……」
深いため息をついた俺を見る2人。
「なんだ?」
「いや…なぁ」
「そうねぇ。ハッキリ言ってウザいわね」
桃の冷たい視線が突き刺さる。いつもの仕返しとばかりに浴びせられる言葉に俺は耐えた。
耐えて耐えて耐え……ようとしたが無理だ。
黙って立ち上がる。その間も思いつく限りの悪口を続ける桃の隣に立った。
「ほんっと豊ってばヘタレよねー。ヘタレで可愛いのは年下のイケメンだけよ。例えば歩ちゃんとか歩ちゃんとか歩ちゃんとか…」
目を閉じ今度は歩君の自慢をしだす桃太郎。真横にいる俺にまだ気付いていない。
「あたしの歩ちゃんはヘタレなんかじゃないけどね。男気があって、でも可愛くて…それに最近は色っぽいのよ。汗で髪が張り付いてるとことか最高なの!」
ゆっくりと形の良い後頭部に手を伸ばす。手のひらを広げ、狙いを定めた。
「あたし生まれ変わったらタオルになるの。歩ちゃんの汗を吸って包んであげ…んなぁぁっ!!!」
「なら今すぐ生まれ変わらせてやろうか。タオルにでも好きになれやアァ?!」
頭を鷲掴みにした手に力を込める。痛みで首を竦める桃が悲鳴を上げれば、高校生3人が驚いてこちらを見た……ちなみに驚いてるのは2人で慣れている歩君は呆れ顔だ。
「やめて!!お願いだからもうやめてっ」
「やめての前に言うことあんだろうが」
「ごっ、ごめんなさ…痛い痛い痛い!!」
手を離せば桃は俺を涙目で睨む。それに睨み返して数秒後…
「歩ちゃーんっ!!!」と情けなくも歩君の元に走っていくオカマ。歩君は抱き付かれながらうんざりした顔をする。
リカと歩君が違うのはこういうところだ。きっとリカなら甘やかすんだろう。リカなら何でも上手くやるに違いない。
「豊」
頭の中で考えていた人物が俺に話しかけてくる。
「桃は桃、俺は俺で豊は豊」
「リカ…」
「見てみろよ。普通あんなのできねぇだろ」
指さす先には歩君の腰に抱き付いて泣きマネを続ける情けないオカマ。俺には頼まれても絶対に無理だ。
「あれはさすがに俺にも無理だな」
「できる方がどうかしてる」
「確かに。さてと……」
リカが立ち上がる。少しよろついてテーブルに手をついた。
「体調でも悪いのか?」
「いや、ちょっと寝不足なだけ」
言われてみれば顔色が少し悪い気もした。
「仕事がそんなに大変なのか?」
「そうだな…仕事だったらいいんだけどな」
じゃあ何だと聞く前にリカはキッチンに消え、戻ってきた手には飲みきれなかったジュースの入った袋を提げていた。
「うちにあっても仕方ないから持って帰れよ。ついでに鳥飼送っていってやって」
まるで生徒を気遣った優しい先生のような台詞。
爽やかな笑顔のはずなのに真っ黒に見えるのはなぜだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
564 / 1234