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ウサギが出ていった扉を見た親父さんが呆れた声を出した。
「あの状態じゃ君から離れそうにないけどな。慧は昔から頑固で融通がきかない」
「さすが似た者親子。星一も同じでしたから」
「それは、まあ…………それより本題だ。
君に1つ聞きたいことがある」
痛いところを突かれたのか、親父さんはそれた話を強引に戻した。そういうところも似てる…と思って心に留めておく。
これからするのはとても大切な話。
俺とウサギのこの先を決める話だ。
「慧が君の為の選択をしたなら別れて二度と会わない。
どう考えても慧は君しか見てないのに、どうしてそんな不利な約束を?」
確かにウサギなら俺の近くにいる為の選択をするだろう。なんとしてでも今の生活を続けようとするはず。
でもそれじゃ意味がない。
俺は自分を選んでほしいとは思っていない。
「別に君と慧の反対をするつもりはない。無理に引き離したりする気はないと言ったはずだ」
「無理に引き離そうとしたら連れ去りますから。アイツは誰にも渡さない」
隠すことなく言った俺に親父さんは目頭を押さえた。ここ数日で慣れたのか何を言っても前ほど動じなくなった。
それぐらい俺の気持ちは伝えてある。
俺がどれほどウサギを思っているか。どれほど大切で愛おしく、手放したくないか。傍にいたいと願っているのかを。
嘘偽りなく自分の言葉で何度も伝えてきた。
「やっぱりわからない。それなら君が今のままいれば慧は君から離れないのに。何があっても慧は君を選ぶのに」
「でしょうね。アイツは今回も俺を選ぶと思いますよ」
「…あの子の選択肢に君以外はありえないだろうね」
ウサギは俺が浮気してると疑っていたときも近くにいようとした。離れないでと全身で訴えていた。
本当のことを聞けなかったのは現実を知るのが怖かったからだろう。
ワガママで独占欲が強く、変わることを恐れて周りが見えていない。
俺を選ぶことで今の状況が変わらないと思ってるなら大間違いだ。
「本当にいいのかい?さっきの様子じゃ君の負けは確実のようだけれど」
ウサギを渡したくないのか、それとも渡してもいいと思ってるのか…その表情からは読み取れない。けれど心配していることに変わりはないんだろう。
「俺は負ける勝負は絶対しない。どれだけ遠回りをしても欲しいものは必ず手に入れる」
たとえ何が起ころうともまた必ず振り向かせる。
今は言えない言葉を何度も叫んで、この思いをぶつけて今度こそ全てを奪う。
「あなたはただ約束を守ってくれさえすればいい。アイツがちゃんと自分の道を選んだその時は…」
俺を見るその瞳は星一ともウサギとも違う。けれどどこか同じ雰囲気を持って、同じように俺を映す。
最初は友人との約束が始まりだった。それは俺にとって義務であり償いであり重く苦しいものだった。
でも今は違う。
自分から望んでその言葉を口にする。
「息子さんを僕にください」
こんなに深く人に頭を下げたのは人生で3度目だ。
初めては星一の事故の後、そして今回。
残る1回はまだ秘密。
ため息と共に返事が返ってくる。
「息子を宜しくお願いします」
その言葉はどちらの意味か。
それを決めるのはこれからの俺次第。
「ただし約束は守ってもらう」
「勿論です。俺は嘘はつかない」
失敗は絶対に許されない。
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