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汚れた身体を綺麗にした後、俺をベッドへと運んでくれたリカちゃんが寝室から出て行く。
やっぱり帰ってしまうんだって寂しくて頭から布団をかぶってふて寝することにした。
しばらくしてガチャッと扉が開く音が聞こえた。まさかリカちゃんが戻ってくるわけないし俺の聞き間違いだと思った。
「もう寝んの?」
今度は聞き違いじゃない。布団から顔だけを出せば隣に座ってパソコンを開いているリカちゃんと目が合う。
眼鏡の奥の黒い瞳がふわっと笑ってくれた。
「せっかく今日はここで仕事しようと思ったのに。慧君が寝ちゃったら意味ないんだけど」
「ここで?」
「そう。あと1時間あれば終わるから俺の相手しろよ」
左手でキーボードを打ちながら右手で俺の髪を弄って遊ぶ。リカちゃんは本当に器用だ。
「慧君さぁ、向こうでナンパされてもついて行くなよ」
「は?俺が女苦手なの知ってるだろ」
「女だけじゃなくてあっちはゲイも多いから。俺の慧君は魅力的だから絶対に狙われる」
視線はパソコンの画面に向けたままでリカちゃんが続ける。
「何言われてるかわかんないうちに路地連れ込まれて悪戯されないか心配だな…」
「知らねぇヤツについて行くかよ」
「わかんないだろ。お前なら甘いものに釣られかねない」
コイツは俺を何歳だと思ってるんだろうか。
「何かあったら俺を呼べよ」
「リカちゃんがそこにいるとは限らないだろ」
リカちゃんの生徒は俺だけじゃない。他にもしなきゃいけないことはあるし、俺だけを構ってる余裕なんて無いはず。
それなのにリカちゃんは自信たっぷりに言い切る。
「俺がお前のピンチに駆けつけないと思う?そんなの天地がひっくり返ってもありえない」
「…へぇ。すげぇ自信」
「1人にしないって約束したからな」
髪を弄っていたリカちゃんの手をとって指に噛みつく。甘噛みしてこっちを向けと訴えれば勘のいい恋人はもちろん気付いてくれる。
「なに?」
「ちょっと休憩したら?」
「まだ初めて30分経ってないんだけど」
そう言いながらも手を止めて俺の相手をしてくれるリカちゃんは優しい。
いっつも意地悪だけどたまに優しくて甘ったるいリカちゃんが俺に近づいてくる。触れるだけのキスを何回か繰り返し、至近距離で微笑んでくれる。
「お前こそナンパされてもついて行くなよ」
「ナンパについて行く教師がどこにいるんだよ」
「絶対に俺から離れるんじゃねぇからな。離れたら許さねぇ」
「なんで急に喧嘩腰になんの?」
俺は苦笑いのリカちゃんに詰め寄る。
「返事は?!」
早く答えてほしい俺にリカちゃんは静かな声で返事をくれた。
「俺はお前のモノだから大丈夫」
「絶対だからな」
「俺は嘘はつかないって何度も言ってんだろ」
俺の頭を撫でたリカちゃんは視線をパソコンに戻し、仕事を再開した。宣言通り1時間で仕事を終えて隣に寝転ぶ。
「手、握ったまま寝る?それとも腕枕?」
「どっちもするわけねぇだろ」
背中を向ける俺を後ろから抱きしめて髪に顔を埋めたリカちゃんが囁く。
「おやすみ慧君」
リカちゃんのおやすみを聞いて、リカちゃんの温もりに包まれて俺は夢の中へと落ちた。
嘘はついちゃダメ。嘘ばっかりついてたら誰にも相手にされなくなる。
嘘はダメ。絶対にダメだ。
でも、誰かに嘘をつかせるのはもっとダメなこと。
嘘をつかないアイツが、どんな気持ちでどんな顔して言ったのか。
それがどれだけ悲しくて苦しくて……どれだけ辛い思いをしていたのか。
それは本人にしかわからない。
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