アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
580
-
***
同じ空でも場所が変われば違って見える。周りにいるのはいつもと同じ顔ぶれでも、景色が違えば雰囲気も変わる。
はずなのに……。
「慧ー!!見て見て!周り外人ばっかりですげぇな!!」
目の前にはいつもと全く変わらない拓海。ここは日本じゃねぇんだから当たり前のことなのに大声で騒ぎ、俺を呼ぶのはやめてほしい。
「アイツはどこにいても変わらねぇな…。だりぃ」
「お前も全く変わってねぇけどな。飛行機の中で爆睡してたの誰だよ」
「朝早ぇんだよ。夜中から出発なら俺だって起きてたっつーの」
どこに夜中から修学旅行に行くヤツがいるんだ。日本とオーストラリアの時差はほとんど無いんだから朝出発に決まってんだろ。拓海のことを変わらないと言う歩もいつも通りだ。
みんなテンションが上がって騒いでる中、俺と歩だけは静かにベンチに座っている。視界に入ってくる全てが英語で読めない。これは迷ったら終わるなー…なんて考えていた時だった。
「あ、兄貴」
歩がリカちゃんの姿を見つけた。別の便で先に向かっていたリカちゃん。俺たちより早い便だったから久しぶりの姿にガン見してしまう。つっても数時間だけど。
ちなみに俺たちの集合時間は7時。リカちゃんが家を出たのは4時過ぎだ。
「なんでアイツ修旅なのに決めてきてんの?他のヤツらジャージなんだから合わせて来いよ」
大半がジャージを着ている中、なぜかリカちゃんだけはちゃんとジャケットを着ている。他にも私服の先生はいるけどリカちゃんほど気を遣ってる感じはしない。
そういうところも抜け目がない。
「兄貴って何時起きなんだ?」
「さぁ。昨日は起きる時間が別々だからって一緒に寝てねぇ。でも電話で起こしてくれた時はまだ飛行機乗ってなかったけど」
「お前兄貴に起こしてもらったのかよ。さすが」
いちいち突っかかってくる歩はもちろん無視した。
英語が出来るからみんなリカちゃんに話しかける。他にも英語の担当がいるのに、ここぞとばかりにリカちゃんに近づこうとしているように見えてイライラする。
「慧。お前すげぇ顔してる」
「なぁ、アイツちょっと近すぎじゃね?」
パンフレットを広げながらリカちゃんに話しかけてるヤツを指させば、歩がジト目で俺を見る。
「なんだよ」
「相変わらずだなと思っただけ。もう面倒くせぇから気にしないことにした」
「なにが?おい!!俺の話は無視かよ!」
スタスタと拓海の元へ向かう歩を追いかける。もう一度リカちゃんを見ておこうと振り返れば、目と目が合って『おはよう』と、その口が動いた。
組んでいた手を小さく振って笑うリカちゃんに、バレたらどうするんだと呆れて睨みつける。余計楽しそうに笑うから悔しい。
「獅子原先生?」
「あぁ、すみません。あまりにも可愛くてつい…」
「可愛い?獅子原先生も外国の女性には弱いんですねぇ」
「いえ、俺が可愛いのはウサギですけどね。飼いウサギに野性味が戻ってくるのも、それはそれで美味しい」
「は?」
後ろから聞こえる意味のわかりたくない会話。誰が飼いウサギだ…この性悪教師!
まだ笑ってるだろう気配を感じながらその場を立ち去る。
「慧?なんでそんな顔赤いんだ?」
「別に」
「どうせ場所考えずイチャついてきたんだろ」
「イチャついてねぇよ!」
不思議そうな拓海と呆れてる歩。
ドキドキとソワソワがたくさん待っていそうな修学旅行が始まった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
580 / 1234