アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
586
-
1日目、2日目が終わり今日で3日目。
今日と明日は自由行動だから俺たちはガイドブック片手にブラブラしていた。
わかんない単語は歩に聞き、それでもわからなければ拓海が力技でなんとかする。
身振り手振りで外人相手に日本語で話しかける拓海。それを見て歩が少し悔しそうにするのを感じながら俺は持っていたスマホで時間を確認した。
リカちゃんと合流するまであと30分。
約束通り時間を作ってくれたリカちゃんが俺を迎えに来てくれるまで30分。
ソワソワする俺を歩が横目で見る。
「お前さ、修学旅行の意味知ってるか?」
「いきなりなんだよ」
「ちょっとは兄貴以外の思い出作ろうと思わないのかよ。1日目も兄貴、昨日は兄貴がいないから拗ねてて今日は抜け出すってバカじゃねぇの」
その言い方にムッときて俺も言い返す。
「別に俺の勝手だろ。お前だって毎日桃ちゃんとメールしてんじゃん」
「あれは生存確認。あの人俺が海外行ったら死ぬと思ってんだよ」
「死ぬって…なんで?」
「さぁ?なんか知らねぇけど海外にトラウマでもあんじゃねぇの」
よくわかんないけど桃ちゃんなりに歩の心配をしてるんだろう。面倒くさがりの歩がそれをちゃんと聞いてるから意外だ。
「歩って桃ちゃんと付き合って変わったよな」
「そうか?」
変わったよ。自分の時間を誰かに使うようになった。嫌なことでも我慢するようになった。
「あのバカ!」
歩が走り出す。その先には拓海が地元の学生らしい数人に囲まれていた。さすが外人…制服を着てなきゃ大人にしか見えない。
何を言ってるのかはわからないけれど相手の表情から拓海がバカにされてるのはわかる。
俺もそっちへ向かえば拓海を庇うようにして立った歩と、リーダー格らしき男が睨み合っていた。
不謹慎だけど人工金髪と天然金髪の戦い…なんて考えたりして。
「お前なんだよ。コイツは何もしてねぇだろ」
後ろで庇われている拓海は何が起きてるのかわからないらしく、不安そうな顔をしている。
変わったと思った歩だけど変わらないところもあって。
「あ?何言ってるかわかんねぇから日本語で喋れよ。使えねぇヤツだな」
外人相手に、外国でそれは無理だろ…。
どう考えても歩の言ってることには無理がある。それなのに本人は堂々と相手を睨みつけ、日本語で応戦していた。
騒ぎが大きくなり遠くから誰かが走ってくる。その中にはうちの教師の姿もあった。
「お前ら何してるんだ!」
3日目にして、とうとうやってしまった…。
問題を起こした俺たちはこのままホテルへ直行になるだろう…。
だんだんと近づいてくる影にそれを覚悟した時、誰かが俺を押した。
人混みの中から突き出された俺が見たもの。
それは無表情のまま「早く行け」と視線で合図を送ってくる歩の姿と、俺を押した拓海の手。
歩が軽く首を振って逃げるよう俺を促す。
見つからないようにその場から逃げ出そうとする俺を今度は別の誰かが引っ張っていく。
「ちょっ…なに?!」
「いいから早く。とりあえず隠れるぞ」
「待てって!歩たちどうすんだよ?!」
抗議した口は手のひらで覆われ、それ以上何も言わせてもらえない。
俺を連れ出したのはやっぱりリカちゃんで、足早に歩きながら言う。
「大丈夫。聞こえてきた感じ悪いのは完全に向こうだからすぐ開放してもらえる」
「本当に?聞き間違ってねぇ?」
「俺が言ってんだから本当に決まってんだろ」
リカちゃんがそう言うなら大丈夫だろう。
連れて行かれる拓海と歩。こっちを見た拓海がバレないように笑って、歩は顔を背けた。
けれど歩いていくその後ろ姿は首の裏を掻いていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
586 / 1234