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「いい加減に離れろって」
俺を爺さんから引き剥がしたリカちゃんが隠すように前に立った。
「本当に油断も隙もねぇ。大丈夫か?」
「俺は別に…」
「あんまり近寄るなよ。食われる」
いくらなんでも食われはしねぇよ…。本気で言ってそうなリカちゃんが爺さんに向き直った。
「これが俺をこき使ってたジジイ」
「せめて名前ぐらい言ってくれ」
「ジジイはジジイだろ」
名前すら言わせないリカちゃんに爺さんは肩を竦めて笑った。随分慣れた様子でそれ以上はリカちゃんに何も言わず俺を見る。
「初めまして子猫ちゃん」
爺さんが俺に向けて手を出す。握手を求めるその手を傍に立っていたリカちゃんが振り払った。
「リカ…余裕の無い男はモテないって教えてやったろ」
「モテなくて結構」
「勿体ない。そうか、今は子猫ちゃんに夢中だから他は必要ないってことか」
ニヤニヤしながら言う爺さんをリカちゃんが睨む。少しして言い返しても無駄だと思ったのかため息をついた。
「それより頼んでたのは出来たのか?」
「あれを頼むと言うな。あんなのは脅しだ」
今度は爺さんがため息をつく。1人わからない俺は黙っているしかできなくて、リカちゃんの隣で2人を見比べるだけだ。
「あとは子猫ちゃんのサイズを測るだけだ。ちょっと借りるけどいいかな」
「貸すだけだからな。手出したら…」
「さすがに50も下の子に手は出さん」
肩をすくめる爺さんが俺を呼ぶ。ついて行くべきなのかとリカちゃんを見れば笑って頷いた。
「何かあったら叫べよ。すぐに駆け付けるから」
「何かって…」
「あのジジイはセクハラが趣味みたいなもんだから気を付けろ」
さすがリカちゃんの恩人…同じ人種だってわけか。
リカちゃんが身体を屈める。その影がかかって視界が遮られ頬に何かが当たる。何かと思ったのは一瞬で、その柔らかさを知ってる俺はすぐにわかった。
「ここで待ってるから行っておいで」
俺の頬にキスをしたリカちゃん。人前でも関係ないその行動に驚く俺の背中を押す。振り返れば手を振って送り出していた。
「必要以上に触ったら許さねぇからな」
「わかっておる。本当にお前はしつこい男だな!」
改めて爺さんに注意した後、リカちゃんは近くにあった椅子に座って足を組んだ。
「子猫ちゃんはリカに愛されてるねぇ」
爺さんに連れられてきたのはアトリエのような作業場だった。
見たことの無い機械が並ぶ中、爺さんが俺に座るよう勧める。 言われた通り椅子に座る俺の前に小さなテーブルを置き、爺さんも腰を降ろした。
「手を貸してごらん」
「手?」
「右でも左でも…あぁ君は右利きのようだから左がいいかな」
左手をとった爺さんがテーブルにクッションを置く。そこに俺の手を乗せ、ちょっと待っているように言って消えた。
知らない場所に1人きり。
ドキドキという緊張とソワソワする不安。
何があるんだろう、リカちゃんはどうして俺をここに連れて来たんだろう。
そんなことを考えていると、少しして爺さんが戻ってきた。大事そうに両手に乗せた木箱を俺に見せてくれる。
「リカから君へのプレゼントだそうだよ」
そう言って開いた中には透明と黒の石が輝いていた。
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