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店を出てどこかへ向かおうとしていたリカちゃんの足が止まる。
「リカちゃん?」
「やっぱりバレたか」
嫌そうに顔を顰めながらポケットから取り出したのは携帯電話。教師用に持たされているソレは小刻みに震えながら着信を知らせてくる。
「無視………は駄目だよな」
諦めて耳に当て会話を始めたリカちゃんに俺は離れた方がいいのか悩んだ。ちょうど目にクレープ屋が飛び込んできて、小腹が空いたなと足がそちらへ向かう。
1歩進んだところで身体が浮いた。
電話をしながら俺を止めたリカちゃんが「どこに行く気だ?」と目線で語りかけてきた。目の前の店を指さす俺に首を振って会話を続ける。
傍目には後ろから男に抱きしめられている状態。
さっきまでと違いこの道は人通りが多い。
「リカちゃん!わかったから離せ」
そう小声で訴えるけれど通話中のリカちゃんには聞こえない。
チラチラ向けられる視線が恥ずかしくて仕方なく、身体を屈めて顔を隠す。
やっと電話を終えたリカちゃんが俺の状態に気付いて一言…
「そんなに力が抜けるぐらい腹減ったのか?」
「違う!!!」
どんなことでもすぐ見破るくせに、どうして変なところは鈍いんだろう。そもそもリカちゃんに恥ずかしいなんて感情を理解してもらおうとするのが間違ってるのかもしれない。
「クレープ食べたいの?」
「別にいらな……やっぱ食べる」
答えた俺を連れてリカちゃんが店へ向かう。もちろん手は繋いだままだ。
いきなりやって来た日本人、しかも男同士の手繋ぎカップル。何か言われるんじゃないかとドキドキする俺の隣でリカちゃんが注文を始める。
当たり前だし、もう何度も聞いて知ってたけど…本当に外人と会話が出来るリカちゃんに驚いた。何度聞いても何度見ても「すごい」と思ってしまう。
「どれが食いたいんだ?」
「このチョコとイチゴのやつ」
「アイス乗せる?」
「乗せる」
俺の希望を全部英語で伝え、少しして商品を受け取る。
俺や歩、拓海が迷ってしまう支払いもスムーズに行ってしまうリカちゃん。
「はいどうぞ」
「どうも…リカちゃんって本当に英語話せるんだな」
「え、いまさら?」
「大人相手にも通じるってことはマジなんだなーって。俺1人なら絶対に買えてねぇよ」
手元にあるクレープは見本にトッピングまで加わったモノ。俺にこれを注文する力はない。
「まあ人には得手不得手があるから」
「得手不得手?」
「得意なことと、不得意なこと」
リカちゃんに不得意なこと…ってあるのか?今までの感じじゃ何も思いつかないけど。しいていえばテレビゲームが下手なことぐらいだ。
あ、あとすっげぇ方向音痴なこともか。
「歩こう。抜け出したのがバレたからホテルにもどらなきゃいけなくなった」
「抜け出した?」
「俺、見回りの途中で熱出して倒れたってことにしてたんだよ。それがさっき嘘だってバレた。ほら不得意なことあっただろ?」
クレープを持っていない方の手を握りながらドヤ顔で笑う。
多分だけど…ドヤ顔してる場合でも、笑ってる場合でもないはずだ。
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