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まず、熱を出して倒れたってのが問題だと思う。自己管理できてねぇのかよって言われても仕方ない。
そして次に抜け出したのはさらに問題。
さすがのリカちゃんでも、これは怒られるんじゃないかな…下手したら何か罰でもあるんじゃないかって不安になった。
俺の為にした事だからすげぇ責任を感じる。
どうしようとハラハラする俺の隣には堂々と笑って立っているリカちゃん。
そしてそのリカちゃんに駆け寄ってくる他の教師たち。
「獅子原先生!!」
ほら。すげぇ顔してこっち来てんじゃん。笑ってる余裕なんてないじゃん…そう思うものの、俺に何が出来るか?って聞かれても困る。
「おい、どうすんだよ」
隣のリカちゃんに小声で話しかければ「余裕」と一言だけが返ってくる。
「獅子原先生、倒れたって聞いたんですが大丈夫なんですか?!」
「少し休んだらマシになったので。ところで牛島と鳥飼が何か問題起こしたって聞いたんですが…」
「ああ。お疲れの先生に来ていただくのも悪かったので、こちらで済ませておきましたよ。連絡が遅くなってすみません」
…あれ?怒られるどころか心配されてる。しかも謝られてる。
抜け出したのはリカちゃんなのに、謝るのは相手。どうしてだろう。
「獅子原先生、いくら生徒が心配だからって休まないと!本当に生徒思いで教師の鏡ですね!!」
キラキラと尊敬の眼差しをリカちゃんに向ける教師を見てわかった。
きっとコイツはリカちゃんが本気で倒れたって信じてるんだ。それなのに歩と拓海の話を聞いて駆けつけたって思ってる。
真実を知らないって幸せだよな…抜け出した、を駆けつけたに変えてしまったリカちゃんが笑う。
俺だけに聞こえるよう小さな声でこう言った。
「な?余裕って言っただろ」
「だから歩たちが連れて行かれてもリカちゃんに連絡なかったのかよ…」
担任のリカちゃんに連絡がこないのはどう考えてもおかしい。
リカちゃんと会えたことですっかり忘れていた俺も俺だ。
「お前マジ抜け目ねぇな」
「じゃなくて日頃の行いがいいって言えよ」
行いがいいんじゃなくて日頃から人を誑しこんだ成果が出てるだけだろ。
「途中で迷ってる兎丸見つけたんで連れて帰りました。いつの間にか牛島達とはぐれたらしくて」
「兎丸!あの2人といないから1人でどこ行ってるのかと思えば獅子原先生といたのか」
「それだけでも駆けつけて良かったです」
これでリカちゃんの株がまた上がったのは確実。
自分の体調よりも生徒を優先し、迷っていたヤツを助けた優しい優しい先生。
みんなはその本性が性悪の悪魔だとは知らずに「さすが獅子原先生!」と褒める。
「どこが不得意だよ…やっぱりリカちゃんには苦手なことなんてあるわけねぇ」
集まってきた教師陣に囲まれて笑っているリカちゃんを見る。きっとこの後は離してもらえないだろう。
あのブレスレットを貰えなかったのは残念だけど、今は諦めて拓海と歩が待ってるだろう部屋へと戻った。
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