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気付かれないように足音を殺し、でも見失わないように急ぐ。
目的の人物は一緒に歩いていたヤツと別れ少し進んで角を曲がった。同じように俺も続く。
「…あれ?」
前にいるはずのソイツが見当たらない。数メートル先に確かにいたのに…どこに消えた?
「確かにここ曲がったよな。急に消えた?なんで?」
他に分かれ道なんてない。隠れられそうな物陰も何も無い…のに消えたアイツ。
前からなんでも出来ると思っていたけれど、まさか瞬間移動まで?!
「そんなわけあるか」
「うわ!!」
俺の心の声にツッコミを入れたソイツは俺の真横に立っていた。てっきり角を曲がって歩いて行ったと思ったのに、本当は曲がってすぐ身を潜めていたらしい。
追いかけることに夢中でまさかソイツ…リカちゃんが立ち止まるとは思ってなかった。
「お前なぁ…」
「えっと」
呆れるなんてレベルじゃない。全身から「お前はバカなのか?!」というのを伝えてくるリカちゃんに俺は愛想笑いで返す。せめて笑った方がマシになると思ったからだ。
「そんなんで俺が騙されると思うなよクソガキ」
「……思うわけねぇだろ」
通常モードのリカちゃんが甘くないことを知っている俺は、もちろん初めからごまかせるとは思っていない。
「なんで追いかけて来るかな。見つかったらどうするつもり?」
「どうって…適当に」
「なんか問題あって呼びに来たって嘘は絶対通用しないからな」
それは俺がいざという時使おうと思ってた言い訳。もし万が一何か聞かれたら、拓海か歩を病人にしてやろうと思ってた。急に具合が悪くなったからリカちゃんを呼びに来たって事にすれば問題ない。
「もし鳥飼か歩に病人のフリさせようと思ってんならやめとけよ」
「なんで?!」
なんでわかったのか…そういや、さっきの瞬間移動の時だってそうだ。リカちゃんは俺の心を読んでる。
俺が心の中で言ったこと、頭の中で想像したことを当ててきやがる。
「なんで?」
繰り返した俺をリカちゃんが見た。すっげぇ冷めてる目で見下ろしてくる。
「お前口に出してんだよ。でもってアイツらだって旅行楽しみにしてんだから邪魔すんな」
「邪魔って…」
「病気ってことにしたら外出禁止になるかもしれないだろ。海外でこっちも普段より厳しくチェックしなきゃなんねぇし」
そこまで考えてなかったから何も言い返せなくて黙る。
無言で浴びせられるリカちゃんの視線が痛い。
「とにかく部屋に戻れ。もう少ししたら点呼だから」
「リカちゃんがすんの?」
「俺は体調不良ってことになってるから休み」
それなら…それならこの後!
「どうせ部屋に連れてけとか言うんだろ?」
「わかってんならいいじゃん」
「だから点呼なんだってば…」
本気で困ってるらしいリカちゃんが珍しくて思わず顔がニヤける。そんなことしてる場合じゃなかったのに。
「獅子原先生?」
リカちゃんの声が聞こえたのか、誰かがやってくる気配がした。
「チッ…、ったく。ほら」
リカちゃんが俺を隠すようにして歩き始める。少し無理矢理な感じはしたけど、俺の期待通りに事が進んで嬉しい。
「お前後で覚えてろよ。お仕置きだからな」
「なんで!」
「言うこと聞けない悪い子にはお仕置き。それも今回は特別バージョン」
いや、あんまり喜んじゃダメみたいだ。
どこにいたってリカちゃんはリカちゃん。お仕置き大好きリカちゃんに変わりはない。
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