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「これ…高いんじゃねぇのかよ」
「真っ先に言うのがそれか。そこがお前らしいんだけど」
慧の華奢な手首で小ぶりの石が揺れる。
「この黒い石知ってる?」
「爺さんがオパールだって言ってた。リカちゃんが昔採ったヤツだって」
あのクソジジイ…秘密にしとけって何度も言ったのに約束破りやがって。でもそれ以上を言っていないのならまあ許してやろう。
急に頼んだ俺に爺さんは最高のブレスレットを用意してくれた。爺さんらしい、繊細で温かさを感じさせる世界に1つだけの物だ。
そっと触れた黒い輝きがこの先の慧を少しでも支えてくれればそれでいい。
「男にネックレスってのもどうかと思ってな。こっちの方が付けやすいだろ?」
予想以上に慧の手首にしっくりと収まったソレを見て何とも言えない気持ちになった。自分が贈った側なのに嬉しいと思うのはなんでだろう。
お前に何かをプレゼントできるのが嬉しい。
目に見えないものだけじゃなく、こうやって形に残せるものを贈れることが嬉しくて幸せで、そして安心する。
「これは俺からの気持ち。どんな困難も乗り越えて自分を大切にしてほしい」
この真っ黒な石のように他に染まらず自分を貫いてほしい。自分を大切にして自信を持ってほしいんだ。
慧に何かを贈りたいと思った時、真っ先に思い浮かんだのがこの石だった。
俺が見つけたオパールの宝石言葉は『潤いと好転』
この先どんな苦難が待ちかまえようとも、それを跳ねのけて幸せになれますように…そう願いを込めた。
自分を表す黒を選んだのは俺のエゴも含まれてる…っていうのは恥ずかしいから言わない。
けれど、きっとお前もこの色を好んでくれるだろう。
まだ何色にも染まっていないお前を俺が隣で支えてあげる。守ってあげる。だから何も心配いらない。
お前はお前の道をいけばいい。
「なんかさぁ人にアクセサリー贈るのって緊張するな。俺のモノだってアピールしてるみたい」
「……どうせ慣れてるクセに」
「なわけあるか。こんなの誰にでも贈るわけないだろ」
こうやって気持ちを込めたプレゼントは初めてだって言っても信じてくれないだろうから黙る。
案の定、疑いの眼差しを向けてくるウサギに苦笑し、俺はその手に巻かれたブレスレットを撫でた。
「俺の慧君を守ってくれよー」
願いを込めて石に触れる。するとウサギは幽霊でも見たかのように俺を見る。
「どうした?」
「いや…別に」
「言いたい事あるなら言えってば」
少し躊躇ったウサギは小さな声で「今日のリカちゃんなんか変」と言った。そりゃあ変にもなる。
だってこんなにも好きなんだから。
「変な俺は嫌?」
「は?いきなりなんだよ」
「慧君はこんな俺は嫌い?」
頷いても首を振っても俺はお前が好きだ。
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