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「慧。俺たちこのまま帰るけどお前どうする?」
日本について解散した後、俺に話しかけてきたのは拓海だ。その隣にはスマホをチェックしている歩の姿もある。
忙しそうなリカちゃんとはまだ話せてない。
どうするか決めてって言われても俺の気持ちは決まってて、離れるなんて嫌だって思うのは変わらない。
だからリカちゃんにふざけたこと言ってんなって文句言わなきゃ。意地悪しすぎたことを謝らせなきゃいけない。
「俺は、」
「兄貴なら学校に寄るって言ってたから待ってても無駄だけどな」
スマホをポケットに戻した歩が鞄を肩にかけ直す。
「送らせる気だったのに使えねぇ」
「なんで歩が知ってんの?」
「さっき見かけた時に聞いた」
「さっき…っていつだよ」
ほとんど見かけないリカちゃん。それを歩がどこで見たのかが気になった。
「飛行機乗る前の便所。アイツ絶対抜け出してタバコ吸ってたって」
「それはお前だろ」
リカちゃんが学校に寄るなら待ってても仕方ない。どうせ帰ったら会えるんだから家にいた方がいい。
歩と拓海、3人並んで空港を出て電車を待っていれば歩のスマホが鳴った。画面を確認した歩の表情が鋭くなる。
「ふざけんなよ、あのオカマ…」
オカマと言われて思い浮かぶのは1人しかいない。
「桃ちゃん?桃ちゃんがどうしたの?」
俺が聞くより早く反応した拓海に歩の冷たい視線が突き刺さる。でも、それに慣れてる拓海は怯むどころか「なになに?」って笑ったままだ。
「今日は兄貴と美馬さんが来てるから会えないって。人に土産頼んどいて何様だよ」
怒ってるのは土産だけじゃなくて会えないからだろう。もちろんそれを言ったら返り討ちにあうから黙る。俺だって少しは学習してるんだから。
「会えないってことは遅くまでかかるのかな?」
「知るか。お前、自分の旦那ぐらい捕まえとけよ」
「なんで俺に…リカちゃんが自由人なのは今さらだろ」
学校に寄った後に桃ちゃんと会ってるならリカちゃんの帰りは遅いはず。でも俺は今すぐ文句言ってやりたい。
納得いかない俺と歩とは正反対のことを言うヤツが1人。
「まあ大人には大人の都合があるんだって」
「なんだよ拓海、やたら機嫌いいじゃん」
鼻歌を歌いながら歩く拓海は、歩の言う通りすげぇ機嫌がいい。飛行機に乗るまでは帰りたくないって拗ねてたくせに別人みたいだ。
「明日、豊さんが焼肉連れて行ってくれるんだってー。好きなだけ食べていいって言ってくれた!」
「焼肉……って俺ら聞いてないけど。慧は?」
「俺も初めて聞いた」
顔を見合わせる俺と歩に拓海がニッコリ笑う。
「当たり前だろ。だって俺と豊さん2人で行くし!」
「は?」
「なんで?ってかいつの間に?」
「帰ってきたら行こうって前に約束したんだよ」
どうしてそんな話になったのかはわからない…けど。まさかあの美馬さんと拓海が、ってないない。
自分たちと歩と桃ちゃんを見てるからってそれに結びつけちゃうのはダメだな。
「あの人…真面目そうな顔して手出すの早いな」
ボソッと呟いた歩。
「美馬さんがそんなことするわけねぇだろ」
何をバカなこと言ってんだとツッコミを入れれば歩は首を振って答える。
「ああいうタイプは絶対にムッツリなんだよ。頭ん中じゃすげぇドエロに違いない」
…そんなわけあるか。あの拓海と美馬さんだぞ。
目の前を歩く小さな拓海と記憶の中の大きな美馬さん。どう考えてもない。
「ドエロはお前だろ。ほら早く行くぞ!」
まだブツブツ言ってる歩を引っ張って拓海を追いかける。どんなに遅くなっても今夜はリカちゃんを部屋で待っててやると決めた。
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