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「獅子原君と別れたのか?」
今…なんて言った?
俺が誰と何だって??
「なんのことだよ」
「別に隠さなくていい。もう全て知ってる」
父さんは顔色を変えることなく俺を見た。本当に言葉通り全部知ってるとしたら、それを言ったのは1人しかいない。
いつ、どこで、なんでそんな話をしたのか。また俺の知らない話が出てくる。
「ありえねぇ。また俺だけ仲間はずれかよ」
「そう言ってやるな。彼なりに必死になっての事なんだろうから」
「あの男が必死になんてなるかよ。どうせ気分だろ」
リカちゃんのことだから自分なら何でもできると思ったんだろう。父さんぐらい上手く言いくるめるのは余裕そうだし。
人を騙すのはリカちゃんの特技みたいなもんだ。きっと笑いながら、あることないこと喋って言い負かせたんだと思った。
父さんが額を掻きながら俯いた。
「あれが演技だったとしたら主演男優賞ものだな」
「なにが?」
「毎日ここに来て頭を下げて行った。朝早くの時もあれば夜遅くの時も、休みの日も。たった数分の為にわざわざ来るなんて迫真の演技だな」
リカちゃんが毎日来た?ここに毎日来て、父さんに頭を下げた…ってありえない。
「どうせお前には仕事だって言ってたんだろうがな」
「いや、本当に最近忙しそうだったけど」
「それはここに来る時間を作る為だろう」
俺がリカちゃんの浮気を疑って、帰ってくるのが遅いことにイライラしてる裏で父さんに会いに来ていたらしい。なんで俺に隠れて?って考えて、もし言われてたら俺なら怒ってたと思う。
勝手なことすんなって言ってただろう…だから内緒にしてたのかもしれない。それはリカちゃんにしかわからないことだ。
「彼にとって、うちは近付きたくないだろうにな」
そう言った父さんは少し悲しそうに見えた。
「初めてお前達のことを聞いた時、なんの冗談かと思った。年の差うんぬんより教師と生徒、しかも友人の弟……ってそれより先に同性なのも問題だな」
改めて言葉にされると何も言い返せない。もしかしたらこのまま勘当とかされるんじゃないかな…父さんは恒兄ちゃん以上に頭が堅いから。
膝の上に置いた拳に力が入る。俺の返答次第でリカちゃんが学校にいられなくなるかもしれない。俺が転校させられるかもしれない。
今まで、なんとかごまかせていた事が奇跡なんだと思えた。
「どうして別れた?もう嫌になったか?」
「そんなんじゃない」
「彼がお前を手放すわけないだろう。あんなに必死に話を聞いてほしいって言い続け、玄関で土下座までしたんだから」
父さんから聞かされた初めての話に心臓がバクバクする。
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