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週明けの月曜日。またいつもの生活が始まる。
修学旅行も終わって2学期残るはテスト、そして冬休みが来て3学期…そう考えると、このクラスで過ごすのも残り数ヶ月だ。
この中のほとんどが進学するらしくて、今度のテストは頑張らないとっていう言葉があちこちから聞こえる。けれど本気で頑張ろうと思ってるヤツは少ないんだろう。
なんとなくダラダラとした雰囲気が教室内に溢れていた。
俺が学校に着いた時には既に歩と拓海がいて、拓海が勉強を教えてもらっていた。それに声をかけずに俺は自分の席へ座り、2人を眺める。
どうして2人は先のことを考えられるんだろう…2人と俺の違いってなんだろう。同じように自分で考え、選んだはずなのに俺だけが違うって言われる。俺だけがもっと考えろって言われる理由。
きっとそれを見つけなきゃリカちゃんは納得してくれない。それがわかっているから俺はあの日リカちゃんの部屋じゃなく自分の部屋へ帰った。
「はぁ…」
机に突っ伏そうとして、隣のヤツが持っているそれに目がいった。
俺が進路希望で出した大学のパンフレット…家からの近さと俺でも入れそうだって理由で選んだから、そんなのチェックしてなかった。
「それ」
声をかけた俺にソイツは驚いてこっちを見る。
「な、なに?」
「…その大学、行くの?」
「うん。ここのね、環境学部にいきたいんだ。
学力はたいしたことないんだけど設備が良くて有名なんだよ」
「ふぅん」
どうしても行きたいわけじゃない大学。そこにどんな設備があろうとどうだっていい。
だいたい俺はその環境学部に行くわけじゃないし。
それなのにソイツはどんどん話す。
「大学の近くに公園があってね、そこには大きな池もあって…」
「知ってる。サーカスが来る公園だろ?」
「そう!でも兎丸君がなんで知ってるの?」
「俺もそこ受けるから」
ソイツの目が見開きパチパチと瞬きを繰り返す。よっぽど俺がそこに行くのが不思議なのか、なぜかすげぇ驚いていた。
「なんでそんな驚いてんの?」
「だって…ここ就職率すっごい悪いよ?同じレベルでもっといい大学あるのになんで?」
「なんでって言われても…ってか、就職率とか気にしてんだ?」
「ここ受けたいって言ったら先生が教えてくれたんだよ。それでも受けるか?って聞かれたもん」
そんなの俺聞いてない。ハンバーガーが美味いとかどうでもいい情報しか聞いてない。
コイツに言ったんなら俺にも教えてくれていいはずなのに、どうしてリカちゃんは俺には言ってくれなかったんだろう。
「僕の家は自営業だし、将来は継ぐ予定だからいいんだけどね。兎丸君もそんな感じ?」
「いや、俺は…まだ」
「まだ何も考えて無いの?それならもっと先のことまで考えて決めた方がいいよ!これあげるからちゃんと読んで」
押し付けられた冊子をペラペラと捲る。どのページを見てもなんとも思わなくて、すぐに最後のページを迎えた。
「返す」
「もういいの?」
「うん、いい」
HRが始まるチャイムが鳴って拓海が席へ戻ってきた。軽く挨拶だけして、なんだか話する気にならなくて前を向く。
きっと様子が変なのはバレてるけど俺からは何も言わない。
「おはよう」
教室に入ってきたリカちゃんは今日も笑っていた。
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